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エピローグ 神に愛され過ぎた男

あれ以来俺と木内はいわゆる、恋人同士っていう関係になった。 そして当然みたいにアイツに言われるがまま、二人仲良くお手々繋いで学校から帰る途中の、道すがら。 あっ...言うまでも、ないと思うけど。 もちろん木内が繋いでくるから、仕方なくだけどなっ! 木内はふと、石で出来た階段を見上げた。 この先にあるのは彼が祈り、例の凶悪過ぎる願いを叶えて貰ったという、あの神社だ。 「なぁ、大悟。  お参り、していこうよ!  神様にお礼、ちゃんとまだ言えてなかったからさ。」 あんなに毛嫌いしていたアイツのことを、いまでは愛しいし、大切だと思うようになったのはこの男のいうように、神様の仕業...いや、おかげと言えよう。 ...つってもそれが俺にとって、イイコトだったのかは今でもよくわかんねぇけど。 「ん...そうだな。行くか!」 ニヤリと笑って手を離し、彼より先に駆け出した。 石段を登りきった先に建っているのは、鳥居の鮮やかな赤が美しい、小さな...でも手入れの行き届いたお社。 鳥居をくぐると、俺に追い付いた木内がまるで年寄りみたいに口うるさく、端を歩かないと駄目だだの、入手水舎の水で心身を清めてからお参りしなくちゃだのと騒ぎ立てた。 THE ハーフ全開なビジュアルとはあまりにも異なる、その立ち振舞い。 …こんなの、ギャップ萎え過ぎんだろ。 思わず、プッと噴き出した。 それでもヤツのいうルールを守りつつ、ようやくたどり着いた神前。 財布をガサガサと漁り、それぞれ小銭を握り締めると、それを賽銭箱に投げ入れた。 最初に木内に言われた通り、二礼二拍手。 そのあと両手をきちんと合わせて、感謝の気持ちを込めて祈りを捧げ、また一度大きくお辞儀をした。 俺の方を向き、ニッ、と嬉しそうに笑う木内。 それに不覚にもちょっとキュンとしたのは、コイツには内緒だ。 *** 境内を出たところで、犬を連れて散歩中のおじいさんに遭遇した。 無類の犬好きである俺のテンションは、一気に急上昇。 「あっ、木内...見ろよっ!  …めっちゃ可愛い、あのワンコ。  トイプーかな?  うぉ、こっち来たっ!  ...触っても、いいですか?」 しゃがみこみ、許可を得られたのでワンコをワシワシと撫でる俺。 それを木内も途中までは、ニコニコ笑って見守っていたのだけれど。 俺はスッカリ、忘れてたんだ。 ...この男の俺に対する、異常なまでの嫉妬深さと、執着心を。 しばらく愛でさせて貰った後、ワンコに引きずられるようにしておじいさんは行ってしまったから、その場に残されたのは俺と木内の、二人きり。 ムッ、と唇を尖らせたかと思うと再び神社の方を向き、パン!と両手を合わせ、何やら祈りを捧げる木内(アホ)。 訳がわからず、ポカンとそれを見上げる俺。 ...何やってんだ、コイツ? でもその、直後。 ...俺は起きたばかりの予想外過ぎる、あまりにも阿保くさい超常現象に愕然とし、パカリと口を開いた。 ...そう、木内の頭に大きな耳が、ケツからはもふもふでフッサフサな尻尾が生えたのだ。 「やっぱり、神様スゲェ。  大悟...俺、犬になったよっ!  だから俺の事も、可愛がって?」 嬉しそうに満開の笑みを浮かべ、こてんと首を傾げる金髪碧眼のアホ王子。 「はぁぁぁぁあっ!?」 思わず大声で、叫んだ。 有り得ない...有り得なさ過ぎる。 ...んでもって神様、コイツに甘過ぎんだろ。 石段の上方を、忌々しい気分で軽く睨み付けた。 心底げんなりしながらも、たぶんきっと、木内の望みが叶うまでは、前回同様この事態は変わらないであろうと思われる。 似合っているとはいえ、ずっとこのままというわけにもいくまい。 期待満面といった感じで、俺の顔を見下ろす木内。 あまりにもバカらしくなり、俺はついまた噴き出して。 ...そのまま腹を抱えて、爆笑した。      【...fin】

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