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※第12話

「あ……!あ゛ぁ……っ!」 顔を背けながらも一度声を出してしまうとどうにも我慢出来ないらしく、綺麗な形の唇から喘ぎ声が漏れる。 「ユキオ……こっち向けって……っ、」 顔が見たくてそう声を掛けるがユキオはなかなかこちらを見ない。 それに焦れてユキオの先端を親指でグリグリと押した。 「ひ、あ゛ぁ!ばっか……っ!!」 力が入らないのか、ユキオの体勢が崩れる。 それに半分覆いかぶさるようにしながら密着する。 手の動きは止めなかった。 というより、最早止まれない。 「なら、こっち向け、よ!!」 言いながら尚もしつこく先端をいじり回していると青の瞳から涙がボロボロと零れ落ちる。 「わか、わかったからぁ……っ、それやめろ……っ!!」 ようやく合った視線に俺は釘付けになった。 真っ赤に染まった頬と泣きすぎたせいか赤くなった目尻。血流が良くなりぽってりとした形に膨らんだ 真っ赤な唇。喘ぎ声が漏れる間に覗く赤い舌。 散々いじり回したせいか額には汗をかいて前髪がしっとりと濡れていた。 深い青の瞳は潤んでいて、目の奥にはドロドロに溶けた劣情がはっきりと見える。 どくん、と自身のモノが脈打つのが自分でも分かった。 擦り合わせているユキオにもそれは伝わったらしい。ビクンと大袈裟なほど肩を震わせると息も絶え絶えに悶える。 「ひ、でかくすんなぁ……っ!」 「いや、むりだろ……っ、」 そんな反応をされては余計に止まれない。 目の前のユキオの唇に噛み付くようなキスを送る。 舌を絡めると今までとは違い、ユキオもおずおずとその舌の動きに合わせて絡めてくる。 ようやく応えてくれるようなユキオの動きに胸が高鳴る。 ヤバい気持ちいい。 触れ合った舌が絡み合って溶けそうなほど熱い。 「ん……ふぅ……っ、」 「……は、ゆきお……、」 手の中も口の中もぐちゅぐちゅと音が鳴る。 自身のもユキオのもビクビクと手の中で震えて限界だった。 「……ゆきお、一緒イって……」 「あ……っ、あ゛……たいがぁ……ぁあ゛――っ!!」 生暖かいものが手の中で溢れる。 ユキオの絶頂する声を聴きながら俺も後を追うようにしてユキオの手の中で達した。 はぁはぁとお互いに肩で大きく息をする。 ユキオなど俺に好き勝手されたからか横になりながらぐったりとしていた。 その姿を見て俺はようやく自身のやらかした事に今更ながら気づく。 「わ、悪いユキオ!!!」 真っ青になりながらガバッと彼から勢いよく離れた。 ――守ると豪語していた奴が手を出してどうするんだ!! 俺は頭を抱える。ユキオが挑発的なのはいつものことだというのについムキになってしまった。 それどころか真っ赤になる様を見てどうしようもなく胸がざわついた。 もっと見たいと思ってしまった。 ――あぁ、今思い出すのはまずい。 また欲が頭をもたげそうになって俺は全力でそれを鎮めた。 「もー、俺今変だから今日はもう帰れ」 両手で顔を覆ってそう告げる。 これ以上一緒にいると何をするか分からない。 今までは自身と一緒にいることが一番安全だと思っていたのに、今では自分が一番信用ならない。 ――俺どうしちまったんだ? 自問自答するが悶々として答えが出せない。 その間に部屋を出て行くと思われたユキオはというと未だ俺の前にいた。 ゆっくりと上体を起こす気配がする。 ユキオの顔を見ることが出来ずに下を向いていると上から声が降ってきた。 「どう変だって?」 この期に及んでまだおちょくる気か。 怒りが降って湧いた俺がはバッとユキオの方を見る。 ニヤニヤしているであろうと予想していたのに、そこには澄んだ青の瞳があった。 「どう変なの?」 真剣な目でこちらを見定めるユキオに俺は戸惑う。 どうと言われても返答に困る。 しおらしい様子に胸がざわつくし真っ赤な顔を見ればもっと見たくなる。男だからとか関係なく良くしてやりたい、それどころか暴きたいと欲が出てしまった。 それが何なのか、考えれば答えは決まっている。 「あー、」 気づいた瞬間、じわじわとまた体温が上がっていく。 首も耳も真っ赤になっていると自覚して俺は顔を手で覆った。 「見んな。良いからあっち行ってろ」 「やなこった」 いつもの俺の口調を真似される。 茶化されてるなと思いつつ手の中から恨みがましい視線を向けると、目を細め嬉しそうな表情のユキオを目があった。 ――何だその(かお)は……! 心底嬉しいですと体現したような蕩けた表情。唇の端は自然に上がって、さっきまでとは違う純粋な笑みだ。 未だに先程の行為の余韻を引きずっているからか、目尻が赤くなっていてどこか妖艶にも映る。

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