29 / 112

せめて 抱きしめて〜承〜 7

「げほっ・・・げほっ・・・」 むせて咳(せき)こむボクを、保険医は満足したように息を吐くと、やっと解放してくれた。 その後は、四つん這いにされて前と後ろを交代して犯された。 何度も奥まで突っ込まれ、何度も舐めさせられて、何度も射精される。 ボクは全然イけなかった。 前立腺を刺激されて、勃起してはいたが、嫌悪感が勝ってイくことができなかった。 好きでも何でもないヤツとセックスすることが、こんなに気持ち悪いなんて、知らなかった。 今まで誰に抱かれても、気持ち良くてどうしよもなくって、何度もイってたのに。 剛さん・・・剛さんとしたい・・・嫌だ・・・!! ぐちゃぐちゃに犯されながら、ボクは剛さんを思い出していた。 会いたい、会いたい。 ただただ、会いたい。 貴方に会うためなら、こいつらを殺したっていいでしょう? 二人がまたボクの中で射精した。 ボクは涙と涎(よだれ)と精液にまみれた顔を、ベットのシーツに押し付ける。 二人がベットから下りる。 交代するのだろう。 わかっていても、体が動かない。 お尻が痛い。 逃げたいのに、体がいうことを聞かなかった。 痛みのあまり、体に力が入らない。 案の定、交代した二人が来る。 ベットに横たわっているボクを、二人は仰向(あおむ)けにさせると、一人が無理にぶち込んで来た。 「・・痛っ・・・!もう嫌だ・・・やめて・・・」 力なく泣きながら懇願するボクの髪を引っ張って、またしゃぶらされると覚悟した。 意外にも、ボクの髪を引っ張るやつは、しゃぶらせようとはせずに、ボクの顔をじっと見ている。 奥まで何度も突っ込まれて、気持ち悪さと気持ち良さの混ざった表情(かお)をしているボクの顔を、無言でじっと見ている。 後ろからの激しいピストンで体を揺さぶられて、気持ちの良い所を突かれて、酷(ひど)い表情をしているだろう。 そいつはボクの髪を更に引っ張る。 「痛いっ!」 思わず悲鳴を上げると、そいつはボクに顔を近づけて囁いた。 「あの大学生、お前の彼氏?」 「え・・・・?!」 「最近やけに早く帰るから、尾(つ)けたらお前T大に入り込んでたな」 「・・・っ!」 「あの柔道部のガタイのいい男。あいつに会いにいってんだろ」 ぞっとした。 まるで表情のない瞳で、声に表情もなく淡々というその様子に。 幽霊じゃないかと思うくらい、冷たい無表情。 突っ込まれている快楽と引き裂かれる痛みなんて、吹き飛んだ。 「違う・・・別に彼氏じゃない・・・違う!!」 恐くて、思わず叫んでいた。 「本当に?お前やけにあいつに懐(なつ)いてて、嬉しそうに話してるじゃん」 「違う、違う!!」 こいつ、何するかわからない。 下手したら、剛さんに何かするかもしれない。 「ゲームだよ・・・今まであんな真面目な人見たことないから・・・あんな真面目くんでも男のボクが落とせるか・・・ただのゲームだよ・・」 とっさにそんな嘘をついた。 剛さんを、みんなを守るには、こうするよりないと思った。 そいつは、ボクの言葉を聞くとにっこりと笑った。 「ふ〜ん、そっか。ゲームね・・・じゃあ仕方ない」 そう言って、そいつはボクの髪を放した。 「おい、早くイけよ」 ボクの中に突っ込んでひたすら腰を振っているやつに、そいつはそう言うとズボンのファスナーを外して、勃起したものを取り出した。 「わかってる・・・くっ・・・!」 イけと言われた男が、大量の精液を吐き出した。 お腹の中ではもう処理しきれなくて、穴の中から精液が出てきて、太腿を伝って落ちている。 その感触が、また気持ち悪かった。 ずぽっと音を立てて引き抜かれる。 そして、交代してそいつがボクの中へ入って来た。 そいつは激しくボクを犯しながら、 「ゲームに夢中になるのもいいけど、週一くらいは相手にしてくれないと、溜まりすぎて何かしちゃうかもよ」 笑いながら、瞳に狂気を孕(はら)んでそう言った。 こいつ、おかしい・・・恐い。 何でこんな・・・。 「わかった・・・」 ボクはそう言う他なかった。 本当に何かしそうな雰囲気だった。 ボクに何かされるのは構わない。 剛さんには、絶対に、絶対にダメ。 そいつはくつくつと喉の奥で笑いながら、ボクをねっとりとした視線で見つめながら、ひたすら腰を振って犯していた。 ボクはそいつが嘲笑(あざわら)いながら犯してくるのを感じながら、ただひたすら、剛さんの笑顔を思い出していた。 あの優しい、あったかい、笑顔を思い出していた。

ともだちにシェアしよう!