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せめて 抱きしめて〜転〜 9
彼はボクの腫れた頬を撫ぜて、口唇を寄せて来た。
「・・・キスしていい?」
触れるか触れないかのギリギリのところで、不意に訊かれた。
ボクは可笑しくなって笑いながら、
「ピザの味がしてもいいなら、どうぞ」
と言った。
彼はボクの答えに笑みを浮かべて、そっ・・・とキスをする。
こういうウリをしていると、セックスはするけど、キスを嫌がる人が多い。
ボクは特にポリシーとかもないから、どうでもいい。
触れるだけのキスをすると、口唇が離れた。
首筋に口唇が落ちる。
ボクにはサイズの大きいシャツの胸元を広げて、何度も何度もキスを繰り返す。
少しずつ体が熱くなる。
胸の中央にある小さな突起を、舌が這った。
「・・・っ・・・!」
声が漏れそうになるのを堪える。
舌先で転がすように刺激される。
「我慢してるの?キミ、本当に可愛いね」
「・・んんっ・・・何で・・・」
「え?」
「何で、そんな・・・優しくしてくれるの・・?」
もう片方の突起を指で摘(つま)まれる。
指の間で優しく揉まれる。
彼は、少し体を起こしてボクの顔を見る。
少しずつ気持ち良くなっているボクを見て、嬉しそうに微笑んだ。
「だって、優しくしたらサービスしてくれそうだろ?」
「なにそれ・・」
答えが可笑(おか)しくて、ボクはまた笑った。
「・・・笑うともっと可愛い」
いきなり恥ずかしくなるようなことを言われて、ボクは笑えなくなり、ふいっと顔を横に向けた。
「照れてる」
「照れてません」
彼はボクの顔を自分に向けさせると、再びキスをした。
口の中に舌が入って来る。
舌を搦ませて、搦ませて。
吸い上げられた時に、腰に甘い痺れが走った。
「んんっ・・・はあ・・・はあ・・」
「可愛い」
真っ直ぐに言われて戸惑う。
今夜一晩だけの関係なのに、どうしてこの人はこんなことを言うんだろう?
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