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せめて 抱きしめて〜転〜 24

「そんなこと言うな。オレは、千都星が生まれて来てくれて、感謝してる。千都星が好きだから、逢えて良かったと思ってる!」 「剛さん・・・」 ボクは顔を上げて、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、剛さんをまっすぐに見つめた。 「本当に?・・・ボク、生まれて来て良かったの?」 「当たり前だ。誰が何と言おうと、オレは千都星が好きだ」 「剛さん・・・キスして。抱いて」 自然とそんなことを懇願していた。 涙は止まらず、相変わらずポロポロと流れている。 剛さんは、優しくキスをしてくれた。 柔らかい口唇で、ボクの口唇を塞ぐ。 いつまでも、いつまでも、こうしていたかった。 この温もりを手放したくなかった。 抱きしめて、いて、欲しかった。 それ以外は、何も望んでいなかったのに。 剛さんは、ボクの頬にも額にも口唇を落として、首にも胸にもキスをしてくれる。 泣いているボクを慰めるように。 ボクの心に空いている穴を、埋めるように。 「剛さん・・・信じて・・」 「なに?」 ボクは剛さんの愛撫に体を捩(よじ)らせながら、呼吸を荒くしながら、 「お願いです・・・ボクを信じて・・・本当に、本当に貴方が好きなんです。貴方だけが、大好きなんです」 まだ、言えないけど。 輪姦されたこと、色んな男とセックスしてきたこと。 恐くて、まだ言えないけど。 いつか言うから。 ちゃんと、言うから。 だから、今は、ボクのこの気持ちだけは、信じて下さい。 ボクの、たった一つの真実なんです。 これ以外は、何も持ってないんです。 剛さんは、体を起こしてボクの顔を覗き込む。 心配そうに眉根を寄せている。 ボクはその首筋に抱きついて、泣きながら懇願していた。 「お願いです・・・ボクのこの気持ちは疑わないで・・・こんなに人を好きになったのは、初めてなんです・・・貴方が好きなんです」 「千都星・・・わかった。わかったから、もう泣くな」 「好き、好き、大好き」 その後、剛さんに抱かれながら、ボクは何度も叫んでいた。 剛さんに抱かれて、嬌声を上げながら。 それでも泣きながら。 縋りついて。 何度も。 何度も。 好きと。 大好きと。 繰り返し、叫んでいた。 * 季節が秋へ変わろうとしている。 蒸し蒸しした猛暑が徐々に落ち着いてきて、朝晩の気温がいくらか下がり、熱帯夜になる日が少なくなって来ていた。 寝る時に冷房をつけると朝方は寒くて目が覚めるほどだ。 まだ半袖で生活できるけど、近いうちに長袖じゃないと風邪をひく気温に下がるだろう。 ボクは学校が新学期を迎えていたので、大人しく学校へ通っていた。 秋は色々なイベントがあるので、学校生活は慌ただしくなる。 学園祭もあるし、ボクの高校は10月に運動会も行われる。 行事とは一切関係なしにテストも行われるので、みんなあれやこれやと忙しく、しつこいセフレもボクに構う余裕がないみたいだ。 ボクはあまりイベントには興味がないので、学園祭も運動会もずる休みしている。 友達がいないボクにとっては、何ともうざったいイベント。 だからみんなが準備などで走り回っていても、ボクは早々に下校して剛さんのところへ通っていた。 剛さんにしか興味がないので、他の誰に何と言われようと平気だった。

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