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第せめて 抱きしめて〜転〜 23

ボクは剛さんの体に腕を回した。 強く、強くしがみつく。 こんなことを言ったら、嫌われるんじゃないかと、不安になる。 「気持ち悪いって・・・男同士なんて気持ち悪いって・・・」 「そうか・・・」 「それでケンカして。何かもう・・・色々いやんなっちゃって・・・」 「ごめん」 「え?」 驚いて顔を上げる。 剛さんが謝る理由が、全くわからない。 剛さんはボクの顔にかかった髪をかきあげると、そっと額にキスをする。 「オレのせいだな。あんな所でキスなんかしたら、誰かに見られてもおかしくないって、気付かなかった。ごめん」 「違います!剛さんは悪くない。剛さんのせいじゃないです!」 何度も何度も必死になって頭を振った。 違うの。 違う。 剛さんのせいじゃない。 ボクはそんなこと望んでない。 貴方に責任を押し付ける気なんてない! 剛さんは少し哀しそうに微笑んでいる。 「本当にごめん」 「やめて下さい!そんなつもりで言ったんじゃないです!違う・・・違うんです・・・」 「千都星・・・」 剛さんは、ボクの頭を胸の中に包み込んで、ぎゅっと抱きしめてくれた。 ボクはその温もりが愛おしくて、大切で、失いたくなくて。 剛さんの胸に抱かれて、知らない内に涙を流していた。 「あの人達のほうが汚い・・・汚いのに、ボクを責めるんです・・・。お父さんもお母さんも、愛人作って、都心にマンション持ってて・・・。そっちで暮らしてて、ここには帰って来なくて」 「・・・」 「結婚してるのに、堂々と愛人抱えて・・・ボクを放ったらかして、無視して、お金だけ与えれば良いと思ってて・・・そうやって放っておくくせに、ボクを汚物を見るような目で見て・・・」 「千都星・・・」 涙が止まらない。 幾粒も幾粒も溢れて来て、剛さんの胸に落ちて行く。 親に気持ち悪いと言われた子供は、どうすればいいんだろう? 顔も見たくないと言われた子供は、どうすればいいんだろう? 「気持ち悪いですか?ボクは、そんなに汚いですか?」 「そんなことない」 死ねばいいの? どっかに消えればいいの? 「そんな目で見るなら、放置するんなら、生まなきゃ良かったのに・・・」 「千都星!」 剛さんがぎゅっと強くボクの体を抱きしめた。 一瞬、あまりの力の強さに呼吸が止まった。

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