86 / 112

せめて 抱きしめて〜転〜 31

ああ・・・やめて・・・それ以上は、やめて・・・。 事実だけど、真実じゃない。 本当だけど、本心じゃない。 やめて。 それ以上、剛さんに何も言わないで! ボクは体をゆっくり起こして、剛さんの声をする方を見た。 「・・違う・・・剛さん・・・」 「千都星・・・」 ドアの所に立ったままボクを見ている。 輪姦されたボクを、見ている。 困惑したような、どうしたらいいのかわからないような、不思議な表情をしていた。 「嘘じゃないですよ。部長のことも、ゲームだって言ってたって。部長が落ちるかどうか賭けてたんですよ」 「違う!違うっ!!」 それはボクがしつこいセフレに吐(つ)いた嘘だった。 あの時の小さな嘘が、こんなところで出て来るとは思わなかった。 部員が言い募(つの)る言葉と、ボクの否定の言葉に、剛さんが苛々したように眉根を寄せた。 「もういいっ!」 剛さんの怒鳴り声。 全員が黙り込んだ。 ボクは恐る恐る剛さんを見上げる。 剛さんはものすごく怒った表情で、口唇を噛み締めている。 「千都星。服を着なさい」 「はい・・・」 冷たい声に心が怯えた。 ボクは、何とか立ち上がって、脱がされた下着とズボンを履く。 「来い」 剛さんがそう言って外へと出て行く。 ボクは急いで後を追った。 助かった。 あそこから、あの状況から逃げることができた。 穏やかな太陽の下に出て、ボクは少しほっとしていた。 太陽の光が、今の悪夢を終わらせてくれたと思った。 もっと残酷な現実が待っているなんて、思ってもみなかった。

ともだちにシェアしよう!