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せめて 抱きしめて〜結〜 6
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両親がボクにあてがったマンションは、大学から近く、自分達の住んでいる場所とは離れた所だった。
万が一にも顔を見ないためだろう。
最低限、生活できるものしか部屋には置かなかった。
ベットと冷蔵庫と洗濯機、エアコンとパソコンだけ。
服は備え付けのクローゼットに放り込んでいる。
料理もしないから、調理器具や食器はなく、長年使っているマグカップだけを持っていた。
食事もこの部屋ではほとんどしないので、テーブルも椅子も必要なかった。
テレビもなかった。
興味がない。
眠るためだけの部屋なので、これで十分だった。
本当は大学生だから勉強するための机が必要なんだろうけど、勉強もしないから要らない。
引っ越してから数ヶ月。
ボクは大学3年生になろうとしていた。
相変わらずセックス三昧(ざんまい)の生活だけど、少し変わった。
学生相手に無料で犯ることは辞めた。
どうせならお金にしようと思って、ウリに切り替えた。
最近、企業の社長や銀行の頭取、売れてる作家や芸能人が集まる乱交パーティーに行く機会があり、そこで契約した。
といっても書面がある訳じゃない。
そんな危険なことはしない。
ボクの電話番号を教えて、向こうが犯りたい時に連絡をくれる。
時間が合えば、ボクが指定された場所に行くという契約。
お金を持っている人達ばかりなので、一晩で10万や20万は稼げた。
お金は使い道もなかったので、貯金していた。
上流階級の人を相手にしているので、Tシャツにジーンズという訳にもいかず、服を買ったりしたが、大抵は服や靴も買ってくれた。
自分好みの服を着せることが好きなのが、男という生き物らしい。
ボクはファッションにも興味がなかったので、言われた物を身に付けるだけだった。
上流階級の人達なので、殴ったり蹴ったりなどの暴力を振るうことはなかった。
それでも相当溜まったストレスを発散するために、暴言を吐いたり、媚薬を打って輪姦されたりした。
でも、そんなこともどうでもよかった。
ボクはただ、夢も見ないくらいに疲れて、気絶するように眠れれば、それで良かった。
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