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ブレイズ、夢とエロスの強化合宿◆7
*
夜も更けて、午後十一時。
「昼間やった動物コスプレも、もっと煮詰めればそれなりの企画になりそうだよね。ふわふわの可愛い衣装じゃなくて、カッコいい系の服なら潤歩も着てみたいでしょ?」
「肉食が捕食種を捕まえて犯す、的な企画ならやってもいいけどよ」
俺達は竜介の寝室に布団を敷き、雑魚寝しながらまだ語り合っていた。客用の布団だとは言っていたけれど竜介の豪華なベッドと変わらない寝心地で、寝転がっているとついうとうとしてしまう。
「でも、家族モノって何かいいね。俺達出身地も齢もばらばらなのに、いつの間にかみんなのこと凄い大事な存在になってるもん」
獅琉が枕に顔を伏せ、忍び笑いをしながら言った。
「フリーズの人達に『亜利馬は俺達のもの』って言ったけど、潤歩も大雅も竜介も、みんな俺のものだよ」
「ハーレムか」
潤歩が突っ込んで、俺もつい笑ってしまった。
「フリーズは結成したてで、まだそこまでの関係は築けていないはずだよ。俺達が彼らより突出してる点は、グループ内での家族愛とか絆みたいなものだと思う。そこを俺達の強みにできればいいよね……」
眠たげな目でそう言った獅琉は、やがて穏やかな笑みを湛えたまま寝息を立て始めてしまった。
「さっきもあれだけエナドリ飲んでたのに、リーダー疲れてるな。全然俺達にはそんな姿見せないけど」
竜介が獅琉の体に夏掛けをかけて、困ったように笑う。
「自分の撮影だけでも忙しいのに、ブレイズの活動が楽しくて仕方ないんだろう。俺達全員を家族みたいに思ってるのも本当だ」
「昔っからこういう奴だよ、獅琉は」
学生時代を共に過ごしてきた潤歩が、枕に頬杖をついて言った。
「俺達の時代なんて不良と優等生とそれ以外で自然とグループ分けになるのが当たり前なのに、獅琉だけはどのグループにも属してなかったからな。自由人な博愛主義者だ」
「潤歩さんは、どうして獅琉さんと仲良くなったんですか?」
「そりゃ、ゲイ友だったからよ。あいつマセてたから普通よりだいぶ早くセックス覚えてたみたいだし、初めの方は俺も色々教えてもらってたわ」
微笑ましいと思う反面、想像して少し赤くなってしまう。……色々って何だろう。リアルDK時代の獅琉と潤歩が見てみたい……。
「……俺はろくな高校生活してなかったし、最後は途中で辞めちゃったから、そういうの羨ましい……」
青春を感じる瞬間や思い出深い過去の感覚は人それぞれで、学校という社会に馴染めなかった大雅にしてみたらDK時代なんて何の特別性もないのだろう。
前に大雅は竜介にも言っていない秘密として、俺にだけ打ち明けてくれた。――「撮影で制服を着ると、少し息苦しくなる」。
「……家族との思い出もないから、家族愛っていうのもよく分からない」
「大雅」
そのポーカーフェイスに頬ずりして、俺は大雅を寝転がったまま抱きしめた。
「俺は大雅のこと弟みたく思ってるよ。大好きだ」
「……俺の方が亜利馬より誕生日早いのに」
「で、でも実際俺の方がしっかりしてるし兄貴っぽいでしょ」
「いいや、二卵性の双子って感じだな」
竜介が笑って、俺と大雅の頭を撫でる。
「どっちも俺の大事な家族だ。もちろん、潤歩と獅琉もな」
「お前ら、やっすいホームドラマかっつうの。聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ」
「潤歩お兄ちゃん、照れないでください」
「うるせえんだてめぇは、俺の弟なら今すぐビール持ってこい」
くすくすと笑う竜介につられて、大雅も小さく笑っている。
「パシリは嫌ですけど、チューならいつでもしますよ?」
「い、要らねえっつの! バーカ!」
ちょっとずつ俺も、潤歩の取扱説明書を理解でき始めているみたいだ。
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