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亜利馬、大ピンチ!◆6

「よ、よく分からんが……秋常がお前に迷惑をかけたのは間違いないみたいだな。悪かった」 「いえ、もう……何て言うか、もう大丈夫です。俺の方こそすみません、大きい声出しちゃって」 「怪我はしてないか。その、秋常が……チンポがどうのと言っていたが……」 「っ……」  頭から湯気がたつほど赤面する俺を見て、夕兎もまた顔を真っ赤にさせて沈黙した。 「亜利馬っ!」  そしてタイミングが良いのか悪いのか、撮影を終えた獅琉が俺を見つけて廊下の奥から駆けてきた。 「どうしたの? さっきフリーズの子達とすれ違ったけど、凄い必死に亜利馬の名前叫んでたよ?」 「し、獅琉さん」 「何があったの? 夕兎くんもいるし……まさか君達、亜利馬に……」 「違いますよ獅琉さん、むしろ夕兎さんには色々助けられたというか……」 「……俺は何もしていない。失礼するぞ」  いつものキャラに戻って、顔を赤くさせたまま夕兎が俺達に背を向けた。 「で、何があったの? 亜利馬」 「いえ、何でも――」 「亜利馬?」 「……う、……」  秋常と同じ「満面の笑み」でも、獅琉の方が百倍怖い。  * 「そんで――惚れてようが何だろうが、そいつらが亜利馬を犯ろうとしたのは間違いないってことだな」 「………」  潤歩のこめかみに青筋が浮いている。獅琉と一緒に竜介の家に帰ると、既に大雅達も戻っていて出前のラーメンが届いていた。買い物をする時間もなかったため、獅琉がメールで頼んでおいてくれたのだ。 「ふざけやがって、あのクソ野郎共っ……!」 「う、潤歩さん。大丈夫です。そこは俺、あんまり気にしてませんから」 「ナメられたままで黙ってろってのか」  獅琉も竜介も、無言で俯いている。 「……ごめんね亜利馬。俺が一緒にいれば……」 「大雅のせいでもないって! お、お願いだからみんな、そんな暗い感じにならないでください!」  無理もないことだ。早い話が強姦未遂。俺だって、他のメンバーがそんなことをされたら絶対に怒るし、笑ってなんかいられないと思う。 「で、でも本当に。実際、俺は何とも思ってませんから。こんなことで大騒ぎしたくないですし、秋常さんも俺をぶっ潰そうとか、そういう理由でやったわけじゃないので……出来れば、無かったことにして欲しいんです」 「亜利馬」  獅琉の手が俺の頭に乗り、そのまま優しく胸へと引き寄せられた。……あったかい。いい匂い。 「獅琉さん……」 「可哀想に、亜利馬……一人で背負わないでいいんだよ」 「え?」 「後は俺達に任せといて」 「えぇっ?」  見上げれば、潤歩も竜介も大雅も――全員、獅琉と同じ薄ら笑いを浮かべていた。 「必ず亜利馬の仇を討つからね」 「おう。勿論、正々堂々とな!」 「……俺も本気出す」 「ちょ、ちょっと待って。みんな――」 「よし。そうと決まれば腹ごしらえだ」  潤歩が割り箸を豪快に割り、ラーメンに突っ込んだ。 「フリーズの野郎共、全員まとめて血祭りだ……!」 「……え?」

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