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番外編、大雅の物語◆7

「お、……大雅。見てみろ、雪だ」  言われて窓の外に顔を向けると、明け方近い渋谷の空に白い粉雪が舞っていた。 「初雪だな」 「……綺麗」 「ああ」  こんな景色を一緒に見ること。それもまた彼の言う「分け合うこと」なのだろうか。 「竜介」 「うん?」  踏み出す勇気はまだないけれど、口実を作るのには慣れている。 「……もし明日もケーキ買ったら、また食べにくる?」 「そりゃ勿論行きたいが、俺ばかりいつも悪いからな。……明日は仕事が終わったら、どこかケーキの美味いレストランで食事でもしないか。今度は俺がご馳走するよ」  嬉しい癖に、顔に出すことができない。ほんの少し笑うだけでも違うと分かっているのに。嬉しければ嬉しいほど、笑えないばかりか顔が赤くなって恥ずかしくなる。大雅は窓の外の雪に気を取られたフリをして、「うん」と素っ気なく呟いた。 「まぁ、言い訳だな……」  竜介が照れたように笑って頭を掻く。言葉の意味するところは分からないがその笑い方が可愛くて、大雅は窓から視線を戻し、竜介の肩に軽くキスをした。 「というわけで、明日は早く終わった方が待ってるんだぞ」 「……うん」  待つのには慣れている。これからだって待つことを覚悟している。――いつか自分が勇気を手に入れられる、その時を。 「寒くないか」 「……温かいよ」  これからもきっと大雅は竜介を待ち続ける。素っ気なさの裏に精一杯の想いを託した、言い訳という名前のケーキを用意して。  終

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