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プロローグ
栗崎諒一(くりさき りょういち)は縺れそうになる足を必死に動かし、一歩、後退りをする。
しかし、背にはすぐに壁。
狭く薄暗いビジネスホテルの一室では、離れようとしても大した距離にはならない。
『…ドクッ、ドクッ、ドクッ…』
心臓が、痛い程鼓動を強めている。
栗崎は驚きと困惑で目を見開きながらも、瞳は目の前の男から逃れられない。
視線の先では、額に落ちる蒼い髪を掻き上げながら、息を飲むほどに美しい男が全裸で自らを慰めていた。
そして、その行為を見せつけるかのように、顔を上げ、淫靡な眼差しをこちらに向ける。
栗崎はこの時、まだ何も知らなかった。
この男の愛と罪を。
そして、贖罪をーー。
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