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第2話
「あれから4ヶ月? 記録更新だな」
リカルドの恋が長続きしないことを知っているミケーレは大げさに口笛を吹く。
「じゃあ、いい加減会わせろよ」
わざと会わせないことに気づいていたらしい。
二度ほど会わせろと言われたが、忙しいとスルーしていた。
「タイミングが悪かっただけだ」
リカルドは何食わぬ顔でカップに口をつけた。
「よく言うよ。警戒心バリバリだな」
ミケーレは誤解している。警戒しているのはミケーレじゃない、アキトのほうをこそ警戒しているのだ。
「俺が彼を口説くとでも?」
「もちろん思ってるさ」
バレたかとミケーレは少年のように舌を出す。
「でも彼が断わるだろ?」
断る? いやそれはないな。躱す気もするが平然とOKする気もする。アキトのいたずらな笑顔が浮かぶ。
「たぶん受けて立つだろうな」
ヒューッとまた下品な口笛を吹いて、ミケーレはなるほどと頷いた。
「彼に言ってやればいい」
「何を?」
「俺には…お前だけだ」
急に芝居がかったミケーレにリカルドはうろんな目になった。
「大丈夫か、お前。遊び過ぎか?」
「やっぱダメか?」
「ダメだろうな。そんな陳腐な口説き文句が通じるタイプじゃないぞ」
そもそもそんな台詞、喜ぶわけはない。
でも意外ときゅんとする? それとも爆笑する? 俺もだよって微笑む…いやないな。どんな反応をするか考えたがわからない。
「へえ、ますます興味がわくな。オペラでも招待しようかな」
「寝るぞ」
以前、連れて行ったらリカルドの膝枕で爆睡したのだ。
「覚えてるさ。寝顔がかわいいんだろ?」
「寝顔なんか見せるか」
思わず言い返したらミケーレが爆笑した。
「お前がそんなこと言うなんて」
憮然としたリカルドにミケーレはにやりと笑いかけ「今週末のパーティに招待する」と宣言した。
「連れて来た方がいいぞ。そろそろ噂になってる。リカルドの相手はどんな奴だって」
噂好きの社交界のおしゃべり雀たちが興味津々らしい。
「これ以上、騒がしくなる前にお披露目したほうが賢明だぞ?」
「…わかったよ」
リカルドは顔をしかめて了承した。
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