1 / 7

第1話 prologue

「じゃあな」 「ああ」  『またな』とは決して言わない。  マンションの前であっちとこっちに別れて歩いてゆく。肌の味は知っているのに、本名は知らない相手。振り返ることもない。  ていうか、どうでもいい。  食欲と性欲と睡眠欲、一番我慢できないのは何だろう。  俺は人の食欲を満たすのが仕事がだけれど、俺を満たすことができるのは誰だろう、ってときどき考える。  そんな時に思い浮かぶ相手と最後会ったのは、二年前の卒業式だった。

ともだちにシェアしよう!