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第2話 タマとチキン

「ユウゲン、タマもっとキチンほしい!」 「チキンな。っておい、骨は食うなよ?」 「ん?」  いつもとは違うごちそうがユウゲンとタマの食卓に並んでいた。  クリスマスなんて一人暮らしのユウゲンは祝ったことがなかった。何が寂しくて、ごちそうを用意して部屋を飾りプレゼントを用意しなければいけないと言うのだ。  家族や友人、それこそ恋人がいれば、この季節は何よりも楽しいものだろう。  ユウゲンにも親しい間柄の人間はいたが、その人たちにはユウゲンよりもクリスマスを一緒に過ごしたい人がいたため、この日にユウゲンが招待されることなど一度もなかったのだ。  かと言って、自宅に招待したいと思う人間がユウゲンの目の前に現れることなど今まで一度もなかった。恋人も過去に作ったことはあったが、誰もがクリスマス前にはユウゲンのもとを離れていった。  しかし今年は違う。  人間ではないが、ユウゲンにはクリスマスを共に祝う獣人がいるのだ。それもその少年にとって初めてのクリスマスである。  これは、特別思い出に残るものにしなくてはならない。  某有名店で購入したローストチキン、猫獣人でも食べられると評判のケーキ屋で予約したショートケーキ、タマお気に入りのシーチキン入りポテトサラダ、それに、何よりも重要なのはきれいにラッピングされたクリスマスプレゼントである。  夕飯、ケーキ、プレゼントの順でクリスマスを祝うのだ、とタマは教わった。ケーキも食べたいしプレゼントも開けたいが、今手に握っているチキンも食べたい。全部を一度にやりたくてタマは若干興奮気味だった。 「タマ、こぼさないように食えって言ってるだろ?」 「だってぇ」 「急がなくてもなくならないから」 「くりいむのけえき、たべたいもん」  欲張りな猫が上目遣いでユウゲンを見つめた。  口の周りにくっついた食べかすを拭ってやると、細い腰が胡坐をかいたユウゲンの膝に移動した。 「もっとちょうだい?」  人間のユウゲンに拾われて数か月、タマはフォークの使い方もスプーンの使い方も、コップの使い方も覚えた。こぼして食べたらダメだとか、皿に顔を突っ込んで食べてはいけないとか、食事中に立ち上がってはいけないとか、人間の生活は細かいルールが多いのだ。  だけど、今日は特別な日だ。少しくらいユウゲンに甘えたって怒られないだろう。そんなことをタマが理解していたかは分からない。無意識に、野生的に体がそう動いていた可能性のほうが高い。タマは幼い猫獣人だから、深くて難しいことなど理解できないのだ。 「タマ、夕飯の食器を片付けるぞ」 「でもまだけーき!」 「ケーキはその後だ」  

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