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また明日。side朱斗
手は、握れない。触れることも出来ない。
声掛けは仕事する為の上辺だけ。目だけは、合わせると稀にプライベートに戻る気がする。
そんな時間は、うんざりする程に過去もそしてこれからも待っている。
「お疲れ様でした。朱斗さん」
「お疲れ様。今日も良いのが撮れたよ」
仕事の関係が終わる合図。
「じゃ、また明日もよろしくね」
手を振って立ち去るのは俺で、樹矢はそこに立ち尽くすだけ。
『また明日』
なんて、俺達にはそれも上辺の挨拶だ。
『おかえり』
俺は家に帰って来る樹矢を一番にそう出迎えるんだろう。きっと、これからも何も変わらずにその言葉で俺達だけの秘密の挨拶を交わす。
『ただいま、朱ちゃん』
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