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第6話
マンションの自分の部屋に入ると同時に、麗音は神にキスを求めた。何度も角度を変え、今までで一番濃厚なキスを繰り返した。
ベットに雪崩れ込み、麗音は神に抱かれた。
三回目の吐精で、麗音は気を失うように眠りに落ちた。
目が覚めると、目の前に子供のよう眠っている神の顔があった。麗音の頭の下にはしっかりと神の腕が敷かれている。少し身動きをすると、神が目を覚めしてしまった。
「悪い、起こした」
「ううん、麗音、大丈夫?」
半分寝ぼけたように麗音を自分の胸に抱き寄せた。
「大丈夫じゃねえよ」
下半身の違和感は拭えず暫く動けそうになかった。
「ごめん」
また、叱られた子犬のような顔をしている。
(この顔に弱い……)
無性に可愛く見えて、触れるだけのキスをした。
「神……さっき、『おまえだけだ』って言われて凄え嬉しかったよ」
麗音は神の暑い胸板に頬を寄せながら言った。
「俺さ、おまえといるとおまえを汚していくように感じて……一緒にいればいるほど、まっさらなおまえを汚してるんじゃないかって……だから、おまえといるのが怖くなった。俺のせいで人生めちゃくちゃにしちゃうんじゃないかって」
神の指が麗音の柔らかい髪を絡めている。
「麗音は汚くないし、汚れてないよ。そう思ってしまうなら、俺が麗音を染めればいいんじゃないかな?」
神の言葉にハッとした。
「それに、汚れてる人の側にいて、こんな気持ちになるはずないから。好きだよ、麗音」
今度は神の唇が麗音の額に触れた。
「よく恥ずかしくもなく、そういう事言えるな」
神の言葉にこっちが恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じた。
「だって、本当の事だから」
「はは……ホント、おまえって真っ直ぐで汚れてないな」
神の背中に腕を回すと、
「神の……そういうとこ、好き」
そう伝えた。
瞬間、麗音の腰辺りに硬いものを感じた。
「お、おまえ、何硬くしてんだよ!」
「だって、麗音が可愛い事言うから」
「もう無理だからな」
「うん……」
明らかにしょんぼりしているのが分かったが、正直、身体的に限界だった。
「麗音、俺の恋人になってくれる?」
不意にそんな事を言われ、一瞬体が固まった。だが、もう迷わない。
「いいよ」
「ホント⁈」
はしゃぐ神に「ただし……」と、一言添えた。
「まず、成績を5位以内に戻す事と、テニスで優勝しろ」
「ええ⁉︎」
「それができないなら、別れる」
「や、やだ!分かった、頑張る!」
「あと……」
「まだ、あるの?」
「一生俺だけ愛せよ」
そう言うと、面食らったように神は目を丸くしている。
「うん、それはできる」
「俺にはおまえだけだ」
神に言われたセリフを今度は麗音が言うと、感極まったのか神は子供のようにポロポロと涙を流した。
(そっか……俺が神の色に染まればいいんだ)
麗音は神の大きな手を握ると、神は嬉しそうにその手を握り返してきた。
「先週、妹が産まれたんだ。会いに行こうと思ってる。弟が産まれた時は、弟を汚してしまいそうで触れなかったけど、今度はちゃんと弟と産まれた妹を抱っこしてこようと思う。神も一緒に来てくれないか?」
麗音が言うと少し目を丸くし、にこりと神は笑みを浮かべた。
「いいよ。麗音の弟と妹見たい」
(それまでに、神の色に染まるといいな)
麗音は神の胸に顔を埋めると、ギュッと抱きついた。
「麗音」
呼ばれて顔を上げると、神にキスをされた。
会いに行った妹の名前は《麗香》だと聞いた。
麗音のように美しく育つようにと、麗音から一文字もらったのだと両親は嬉しそう話した。
それを聞いた麗音は、堪らず号泣した。
「過去はどうあれ、お母さんにとって麗音は宝物なんだろうね」
神は麗音を抱きしめ、泣きじゃくる麗音の背中をずっと撫で続けた。
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