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第9話そしてお前は俺で――

   ◆  ◆  ◆  ひと目で俺は、雪也に惹かれた。  俺よりも大きな背丈に頑丈そうな骨格。精悍な顔立ちに人懐っこい笑顔――俺とは真逆の人間。俺にはないものを全部持ったヤツだと、一瞬で理解した。  ここまで俺のないものばかりだと、腹が立つを通り越して、素直にいいと思えた。  そして手に入れることができれば、俺の足らないものが全部埋まるんだと確信した。  その日から俺は雪也のことを、とことん知ろうとした。  俺からも話をしたし、他のヤツらと話しているのを聞き耳も立てた。言葉はなくても雪也の視線を追い、何に興味を持っているかを探った。  もちろん雪也の好みも把握した。幸い、俺の外観は好みだと分かって、内心嬉しくて仕方がなかった。  情報を揃えたら、あとは関係を重ねるだけ。  ズボラなフリをして雪也の気を引いて、とことん面倒見てやらないと……と義務感を持たせて、好きそうな格好や態度で気を持たせて、その気にさせて――。  雪也から一線を越えさせたくなるまでその想いと欲情を育てたのは、他ならぬ俺自身だと知ったら、どう思うだろう? わざと仕掛けたのかと怒るか?  ……いや、もう手遅れだ。  だって雪也はもう、俺の中を知ってしまったのだから。  なあ雪也……今の俺はな、本当にお前でできたようなものなんだ。  そして今のお前は、そんな俺でできたんだ――。

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