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誰かを好きになることは(3)

「瀬口!」 放課後、今週になって三度目の嘘、“用事があるから”を使って一人先に帰ろうとしたけれど。 後ろから大好きな声に呼ばれ、思わず振り返ってしまった。 後悔した時には既に遅し。 矢野くんに、がっしりと手首を掴まれた。 「瀬口、用事なんかないでしょ」 真剣な瞳で俺を見つめ、わりと強い口調で矢野くんがそんなことを聞く。 「あ……るよ、」 矢野くんに嘘を付くのは気が引けるけど、こればかりはどうしようもない。 「ないじゃん。俺には分かるんだって」 「……っ」 「俺のこと避けてるよな?」 避けてるよな? と聞かれて、うん避けてます、なんて返す人はどこにもいないよ矢野くん。 だって、理由があるから避けなきゃいけなくなってるんだもの。 返事に困りしばらく黙っていると、“はい、取り調べを行います”と言って矢野くんは僕の手を握ったまま歩きだした。 「矢野くん、離してよ」 「やだよ。だってお前逃げるじゃん」 「逃げないから……!」 「だーめ、嘘つきの言うことは聞きません」 “本当に逃げないってば” そう言っても、嘘つきだからって言って矢野くんは離してくれない。 だんだんと握られている手に熱が集中し、汗が滲みだす。 全身がドキドキうるさくて。 絶対手から矢野くんにこのドキドキが伝わってるはずと、頭の中まで沸騰しそう。

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