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誰かを好きになることは(4)

別にいいじゃんか。 僕と帰らない日があったってさ。 矢野くんにはたくさん友達がいるんだし、好きだって言ってくれる女子もたくさんいる。 わざわざこんな僕と仲良くしなくたって、困らないでしょう? あーあ。 最初は見てるだけで満足だったのに。 矢野くんが話しかけてくれるようになってから、もっと話したいってそう思うようになった。 帰り道が同じだと分かってからは、一緒に帰るようになって。   そんなふうに一緒に過ごす時間が少しずつ増えていくから、僕の中で矢野くんが傍にいてくれることが当たり前になってきて。 もっともっと、って。 ずっと一緒にいたいって、思うようになってしまった。 仕方ないでしょう? 人間なんだから、誰だって欲張りになる。 だから、僕は怖いんだ。 気持ちが抑えきれなくなって、矢野くんにバレた時。 立ち直ることができるほどの強い心もないし、 矢野くんを好きな気持ちは、立ち直れるくらいの小さなものじゃない。 もっともっとが積み重なって、とてつもなく大きくなったんだ。 「矢野くん、離して……」 「やだって」 「離してよ……」 「もう少しで俺ん家に着くから我慢して」 「何で矢野くん家……」 あぁ……。 あれ程行きたいと願っていた彼の家に、こんな形で行くだなんて。

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