49 / 226
これから始まる(9)
「……ふ、」
何度も重ねられる唇に、合間に漏れるお互いの吐息に、余裕をなくしてもうキスに応えるのがやっとだ。
彼が俺のことを好きだなんて、幸せすぎておかしくなりそう。
回した手に力を込め、すがりつくようにして抱きつく。
「……っ、ん」
キスしてるのに、もっと欲しいって、彼を欲する気持ちを止められない。
呼吸もうまくできないのに、それでも欲しくてたまらないだなんて。
でも、そんな自分を笑う余裕もないし、もうみっともなくていいやって、彼のキスを受け入れる。
「ねぇ」
「ん?」
「俺ね、」
唇が離れ、俺の口の端から零れ落ちる唾液をペロリと舐めている彼に、くすぐったいよと笑いながら頭を撫でる。
「もっと、好きになっちゃった」
彼の髪にちゅっと軽いキスを落とせば、だからそれはダメだって、顔を上げた彼に鼻を噛まれた。
「我慢できなくなるだろ。下にはひかるの親がいるのに」
「あ、」
「忘れてただろ。ばーか」
「でも、俺からだってキスしたいよ。されてばっかりじゃあなくてさ、」
自分からするのはいいのに、俺からはダメとかそんなの酷いじゃん。
それが気に入らないから。
髪の毛を掴んで、彼が痛いと言うほどに引っ張った。
案の定怒った彼が、俺の耳を引っ張る。
ともだちにシェアしよう!