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これから始まる(8)
「いつから知ってたの?」
「ん?」
「俺の気持ち、いつから知ってた?」
沈黙に耐えられなくなってそう聞いてみると、彼は俺の鼻に自分の鼻をすりすりと合わせた。
「ひかるの気持ちに気づいたのは去年」
「去年……?」
「そう。だけど、俺がひかるを好きになったのは、もっともっと前」
「もっと前って? いつ? いつから?」
気になるような返事だけしておいて、彼はそれ以上は何も言うことなく、少しだけ意地悪な笑みを浮かべている。
教えてくれたっていいじゃないか。
お互いの気持ちは分かったんだ。
知られてマズいことなんか何もない。
「ねぇ、いつから」
「はい、ひかる。あ~って口開けて」
「あ~……!」
当たり前のように話を遮られ、おかしなことを要求されてのに、彼の言葉につい従ってしまった。
開けた口の中に、またしても彼の舌が滑り込む。
「んっ、」
最初のキスもなかなか濃いキスだったけれど、今度のは激しい。噛みつかれているような、そんな感覚。
少し唇が離れた瞬間に大きく息を吸う。
鼻での呼吸じゃ追いつかない。
「ふぁ、」
苦しそうにしている俺を気にすることもなく、彼はキスを続ける。
苦しいよ、と背中を何度も叩くとやっと解放してくれた。
「くるし、」
「ひかる」
「んぅ、」
でもそれもほんの一瞬。
すぐにまた唇を奪われる。
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