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それだけ?それとも……。(8)
「何で、こんな、こと、するの、」
「お前のせいじゃん」
「なんで、」
「……お前が触るからだろ」
いつもいつも、何かあってもなくても俺に会いに来ては、この手を触って。
それから可愛く笑って、俺の名前を呼ぶじゃないか。
そうやって、俺のこと夢中にさせた責任を取るべきだろ。
「お前は好きな手だったら誰でもいいのかもしれないけどな、触られる方の気持ちにもなってみろよ! んで、自分が可愛いって自覚持て! 触らしてくれるヤツがみんないいヤツなわけじゃないんだ。俺みたいに変な気起こすヤツだっているんだから」
イライラする。俊太にも、もちろんこんなことを言って俊太を困らせてしまっている俺自身にも。
隣の机を蹴飛ばすと、それを見て俊太がさらに泣き出す。
ああもう本当に、俺はどうしたらいい?
泣かせたいわけじゃないのに、この感情を抑えることができない。
だって俺は──。
「んだよもう!」
ああ! っと叫んでその場にうずくまった。
今までそれなりに優しく接してきたのに、こんな怒鳴ったりなんかしたら、絶対に俺のこと怖いと思うに決まってる。
みっともねぇ。
俺は何やってんだろう。
「……、はぁ、」
自分に呆れてため息をついた時、ぐらりと体が揺れた。
俊太が、俺の制服を掴んだから。
「え、」
有り得ない状況に戸惑い、顔を上げれば、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした俊太が視界に入る。あぁ、こんな顔をさせたかったんじゃないのにって、じわりと目頭が熱くなる。
「特に、って言った!」
「え?」
「僕が、手を触っても、特に何も思わないって、昨日、言った!」
ぐっ、とさらに服を掴む力が強くなる。
俊太は、何が言いたいんだ?
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