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君と会える日(5)
「みんなも時雨に会えなくなるのは寂しいって言うけど。俺の寂しいは、そんなもんじゃない。……俺は、お前のこと、すげぇ好きだから。その分、みんなより寂しい」
たった一週間だけなのに、これが一生の別れなわけでもないのに。
また少し我慢すれば会える、触れられると思っていても寂しい。
寂しくて寂しくてたまらない。
きっと、時雨だからこんなふうに思う。
消えるのなら、俺も一緒に消えたい。
時雨のいない教室はつまらない。
さっきまでそこにいたのに、雨が止んだ途端に見えなくなってしまうのも、苦しい。
「皐月くん、僕も……。僕も寂しいよ。だってね、僕、皐月くんのこと、好きだから……」
「……っ、」
でも……、でもね。
君もそう思ってくれているのなら、寂しくても頑張れる。
君も同じように、俺を思ってくれるのなら。
「次に会った時、時雨のこと、ぎゅって抱きしめてやる」
照れながら言ったその言葉に、時雨が笑ってくれたような気がして。
俺は両手を広げ、何もない場所を抱きしめた。
何も感じないけど、時雨は俺の腕の中にいる。
「皐月くん、」
ちゃんと、ここにいるんだ。
「時雨、大好き」
小さくそう囁いて、どこにあるか分からない時雨の唇に、そっとキスをした。
END
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