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強がりないちご(2)
「ありえないっ、お前ってばかだったんじゃねぇの!?」
俺は、きぃーっと、まるで威嚇するかのように叫ぶと、森川にテストを投げて返した。そんな俺を、森川がさっきよりひどくばかにしたように笑う。
「いやいやいや。甘く見てもらっちゃあ困るよ君。こんな完璧な俺がお前みたいなばかであるはずがない」
“すごいだろ”と、片手を腰に当て、ひらひらと自慢気に俺の目の前で森川がテストを揺らす。
何なんだ、コイツ。
ただのナルシじゃねぇか、ばか森川。
そうやってカッコつけて、勝手に自慢してろ。
俺は森川の、こういうところが少し嫌い。
……だけど。
「綾瀬、」
「んだよ」
森川を睨みつけたまま、ぷうっと頬を膨らまし、不機嫌さを丸出しにした。
森川はそんな俺を見て、今度はばかにした感じではなくふわりと笑った。
腰に置いていた手を伸ばし、俺の頭をぽんぽんと叩いた後、くしゃりと撫でる。
「お前はばかでいいんだよ。ばかでも可愛いからな」
「……っ、だから俺はばかじゃねぇよ」
でも、コイツが、俺のことをこんなふうに扱うから。
森川なんて俺にとったら、ただのナルシ野郎でイライラの対象なのに。
……悔しい。
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