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強がりないちご(1)
「あ、お前に勝った」
「ちょっ、人のテスト勝手に見んなよ」
国語の時間にこの間受けた中間テストが返却され、周りのみんながお互いに見せ合いワイワイ騒いでいる中、俺は中途半端な自分の点数をこそこそと見ていた。
それなのに、隣の席の森川が俺の気づかないうちに背後から忍び寄り、テストを覗き込んでいたから最悪だ。
「78点とか中途半端じゃん」
そんなこと、言われなくても分かってるよ。
悪くはないけれど、決して自慢できる点数でもないってことくらい。平均点ともほぼ変わらないしな。
でもだからってどうして、森川に俺の点数を笑われる必要があるのか。
俺のを勝手に覗き込んだ上にこの態度だ。
俺より点数が良いのだろう。
だが所詮森川。
俺と大して変わらないはず。俺より少しだけ点数が良いからって、調子に乗って騒いでいるだけだ。
「お前何なの? 中途半端とか言うなよ。そんなこと言う余裕があるってことは、さぞかし良い点が取れたんでしょうね」
これで予想通り点差がほぼ無かったら、俺だってお前のことばかにしてやるからな。
ふんっと森川を睨み付け、手を伸ばしてテストを奪った。
どれどれ……、って、嘘だろ。
「……森川、お前、」
解答用紙には丸しか見当たらない。
あげく、右上には大きなはなまるがあり、その横に堂々と98点と書かれていた。
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