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想いの先に。(2)
叶わないと知りながらどうして俺は、この恋をやめることができないのだろう。
授業中、隣の席で眠る彼を見て、ふとそんなことを思った。
「ふぅ……、」
彼は毎回、数学の時間になると寝てしまう。嫌いなのかと思えば点数は悪くないし、理由を聞いても“眠くなるから”としか答えてくれない。
でもまぁ、それが俺にとってはありがたいことなのだけれど。
うつ伏せになった彼の寝顔は見ることはできないからって、俺はすぐに視線を黒板へと戻し、キレイな文字で板書をした。
後で彼が、“ノートを見せて”とそう言ってくるから。
彼はいつも、頑張り屋だと俺を褒めてくれるけど、そうじゃないんだよ。
数学嫌いな俺がこうも一生懸命に頑張るのは、少しでも彼との接点が欲しいから。
俺のことを良い奴だと、彼にそう思って欲しいから。
気持ちは手に入れられないって分かってる。だからせめて、友だちとしては特別に見てもらいたいんだ。
こんなことを考えているだなんて、彼は全然知らないのだろうけど。
「Dイコール……」
やめることができないのなら、いっそのこと想いを伝えてみようか。
やめられなくて苦しむとの、やめることになって苦しむのとでは、どちらがつらい?
彼はどんな表情を、言葉を、俺に向けるのだろうか。
「……っ、」
──無理だ。俺にはできない。
やめることができずに、この気持ちに付き合っていく方がいい。
ずるずると引きずったまま、ずっと。
それでもいつか、いつの日か、気持ちを伝える時が来たとして。
「この答えは、解なし、か……」
俺のこの想いに、答えが出せるのだろうか。
END
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