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今、君に。(2-5)

「こんな俺なのに、ずっと、好きでいてくれたの……?」 「ん、」 「春……っ、」 ああ本当に、俺は何てことをしてしまったんだろう。 ずっと好きでいてくれたことは嬉しいけれど、でもそれは春がこれまでずっと苦しめられたままだったってことを意味しているわけで。 「春……」 思い出すだけで吐きそうになる、あの時の記憶。泣き叫ぶ春を置いて逃げた、あの時の自分。 忘れたことは、一度もない。 伝えきれないごめんねの思いで、俺は春の頬にそっと口付けた。頬を伝う春の涙が、俺の唇を塗らす。 「あつし、」 「ん、」 「好き……っ、だいすき、」 「……俺も」 夢じゃない。   今、春は俺の腕の中にいて、まだ俺を想ってくれている。 春との再会も信じられないくらいに嬉しかったのに、またこうして触れられることが許された。 傷つけたのに、たくさん泣かせたのに。 それでも春は───。 「ごめんな」 「……っ、」 「無責任だったよな」 「……っ」 「今度は、大切にするから」 「あ、つ……し、」 もう無理だって、耐えられないって。そう春に言った自分がいるのは確かで。それは春にとっても俺にとっても、一生消えることのない記憶になってしまった。 これから先もその記憶のせいで、春が傷つく日もきっとあるはず。 だけど、それを思い出すことがないように、たくさん愛して、愛して、いつも大きな愛情で包みこんでいたい。 たとえまた、白い目で見られることになったとしても、今度は絶対に離さない。 「春……、」 「一生、大切にする、から……」 “愛してるんだよ” あの時言えなかった言葉を今、君に。 END

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