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ねぇ、こっち向いてよ。(1)

「らーんちゃん、俺と付き合って」 「嫌だ。キモいから消えろ」 「らんちゃんってば、今日もばっさり言うなぁ……」 目線を合わすことなく放たれるその返事に、少なからずダメージは受けるものの、今じゃあその暴言でさえ愛しく感じる。 一体これまでに俺は何回藍に告白して、そして断られてきたのだろうかと考えてみれば、両手と両足の指を使ったって数え切れないくらいの回数で、しかも毎回ろくに相手もしてもらえずにあっさりと終わってしまうけれど。 それでも藍を、諦めようとは思わない。 絶対に手に入れるつもりでいるし、藍だって本気で俺に汚い言葉を吐いているわけじゃないって、ちゃんと分かっているから。 彼なりの照れ隠し。 真っ赤になっている頬が、耳が、何よりの証拠。 「ああもう、藍ちゃん可愛い」 「……、黙れカス」 藍の怒った顔も、大好き。 返事をした後に、言い過ぎたかな?って戸惑った反応を見せて、きゅっと結ぶその口も。  今すぐそれに自分のを重ねてしまいたいと、そんなことを考えながら藍の唇を指でなぞれば、さっきよりもさらに、藍の頬が赤くなる。 調子に乗って唇の境目に指を差し込むと、思い切り噛まれてしまった。 痛い、と声を漏らせば、藍は迫力のないその潤んだ瞳で俺を睨む。 あぁ、たまらなく可愛い。 藍のこと、もっともっと困らせたい。それから怒った顔を見たい。

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