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ねぇ、こっち向いてよ。(18)
ぎゅうぎゅうと、抱きしめる力を強めれば、応えるようにして藍も、俺の服を強く掴む。
今までは一方的に抱きしめていたけれど、抱きしめればもう、こうして返してもらえるんだなぁ。
「藍ちゃんはね、可愛いよ。一緒にいられる時間はとても楽しくて、とても大切。それにね、顔も可愛いけど、藍の可愛さは顔じゃないよ」
「……っ、」
「藍が素直じゃないのは、十分知ってる。でも素直になれない自分を、気にして悩んでるのも知ってる。そういう藍ちゃんがね、可愛くて愛しいんだよ。それにね、怒った藍ちゃんも好きだから。俺にはね、素直になれなくてムキになってしまうところも、可愛い威嚇にしか見えないよ」
「やま、と……っ」
「藍ちゃんは何も変わらなくて良いの。そのままの君が好き」
いつもふざけているように見えるだろうけど、俺はこんなふうに思ってるんだよ。
我が儘でも、素直じゃなくてもいいの。その分俺が、ドロドロに甘やかしてあげるから。
だから、どんどん落ちてきて。何も考えずに、ただ俺のことを好きでいてくれたらそれでいい。
「藍ちゃん、」
「ん、」
「大好き」
藍の鼻に自分の鼻をすり合わせる。
それからおでこをコツンとぶつければ、目にいっぱい涙をためたまま、藍がふにゃりと笑ってくれた。
「藍ちゃん。好きになってくれて、ありがとう」
「……俺も、ありがと、」
俺としては、こういうところが十分素直で可愛いんだけどね。
「パン食べる前に、藍ちゃんを食べようかな」
「……っ、ばか!」
何か危険を感じたのか、藍は俺の背中に手を回すのをやめ、離れようと身を捩った。
けど、残念。それよりも先に、俺は片手を藍の頭に回して固定した。
今ここで、離すつもりはないからね。
「いただきます」
「……んっ、」
可愛い可愛い藍ちゃん。
さっきよりももっと、激しく深く、その唇を味わった。
END
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