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ねぇ、こっち向いてよ。(17)
「……んぅ、ふっ、」
漏れる吐息も愛おしい。
薄く目を開いて藍を見れば、ぎゅうっと目を閉じて、必死な藍が見える。
今日は珍しく抵抗しないんだね。キス、してるのに。
弱ってるから? もう抵抗する力もないのかな?
俺はそれをいいことに、角度を変えて何度もキスをした。
しばらしくして藍の呼吸が荒くなってきたところで、これ以上は苦しいだけだと唇を離した。さっきまで泣いていた藍も、まだ涙は光っているけれど、少し落ち着いたように見える。
けれど、視線を合わせるとまた、藍は泣き出してしまった。
「藍ちゃんごめん。嫌なことしたね」
もう一度抱きしめ、藍の背中を優しく撫でる。
あれ? でも、どうして?
嫌だから泣いているのだと思ったけれど、藍はまだ俺の背中に手を回し、服を掴んだままだ。
離れる気が、まるでないみたいに。
「藍……?」
「……やま、と、」
「ん?」
「……好き、」
「え……?」
藍の声はまだ小さかったけれど、でもはっきりと聞こえた。ずっと聞きたかった、好きの二文字。
藍ちゃん、俺のこと好きになってくれたの?
「でも俺、」
「うん?」
「わがままだし、素直じゃないし、可愛くないからっ、やまと、は、女の子といる方が、」
「藍ちゃん、」
藍は泣いてるのに、俺の口元はさっきから緩みっぱなし。
だって結局さ、俺が原因で泣いてるんだろ?
藍ちゃんは、こんなふうに取り乱してしまうくらいに、俺のこと好きになってくれたんだって。
ひどいかな?
泣いてる藍を前にして、幸せで胸が満たされる。
「藍ちゃん、可愛い」
「……うぅ、」
「可愛くて可愛くてたまんない。もう、好きすぎておかしくなりそう」
ねぇ、藍ちゃん。どうして君は、そんなに可愛いの?
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