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【Side M】
ふいに意識が浮上し、鼓動が不自然に逸った。瞼を無理やり押し上げると、暗闇の中に四角いなにかが浮かび上がる。佐藤くんの広い背中が、奇妙に蠢きながらその輪郭を変えていた。
ヘッドホンにサンドイッチされた頭が、ゆらゆら気持ち良さそうに揺れている。ピアノの音色は佐藤くんの耳の直接吸い込まれ、俺には木と木がぶつかる鈍い音しか聞こえない。でもそれはきっと、とても優しいメロディーなのだろう。
あー……だめだ。
本当はもっと見ていたいのに、瞼の重みに抗えない。
「おやすみ、佐藤くん……」
大好きな人が奏でる音のない旋律を聞きながら、俺はまた夢の世界へと旅立った。
fin
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