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9.エクスカリバーは無敵♂
(やめてやめてやめて……っ、無理だかぁ!)
必死の懇願も言葉が出なきゃ聞こえない。
聞こえても多分聞き入れてもらえないような気もするけど。
「大丈夫大丈夫。先っぽだけだ」
(うわぁぁっ、これって処女狙う男の常套手段じゃないかぁぁっ!)
てか、先っぽだけでも絶対無理!
「優しくするから」
(優しくても痛い、 絶対死んじゃうってば)
「充分馴らしたし、な」
確か彼の太い指を三本ほど突っ込まれて、嫌ってほど掻き回されけど。それでもそんなモノ役に立たないくらい、このエクスカリバーがエグい。
「じゃ、いくぞ」
(ひっ! ああっ、駄目ぇっ、壊れちゃ……)
「っ……あ゛……ッ、あ゛あ゛あ゛ぁ゛……!」
「ン……きつ、い、な」
痛みとか圧迫感とか異物感とか。色々な表現あると思うけど。
色んなものひっくるめて、苦しい。引き裂かれるんじゃないかって思う位苦しくて怖くて辛い。
思わず叫んで逃げを打とうとするけど、当然打ち込まれたソレがさらにくい込んで苦痛に拍車をかける。
「や……だぁっ……だ、め、裂け、ちゃ、ぅうッ……」
「っ……テメェ……」
一瞬、目を見開いて静止した彼だったが。
直ぐにまた膝を開いでグイグイと 推し進めてくるのを、僕は分厚い胸板を腕で突っ張って必死で抵抗する。
「た、助けっ……ぁ゛……ひぎぃ」
「リアン……ッ……愛して、る」
「こ、このっ……ばかやろぉぉっ……!」
―――この後に及んで愛を囁く、変態王子を渾身の力を込めて怒鳴りつけた。
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白いシーツが眩しい。目に痛い。っていうか涙が……あー、もうなんにも見えないし見たくないや。
「リアン。すごく綺麗だな」
「君はすごく変態だね」
「ようやくテメェの声を聞けた」
「馬鹿じゃないの……」
ものすごく嬉しそうに、幸せそうに微笑むもんだから。
あー。この人もちゃんと表情筋動くんだって驚いた。
あと、なんだか彼すごく喋ってない!? キャラ変わったってくらい喋ってるし。
もしかして……浮かれてる?
「すごく可愛かったぜ」
「君は、すごく酷かった」
「絶対幸せにしてやるからな」
「……」
ダメだ。全然人の話聞いてない。
――― 僕は声を取り戻した。結局『短剣(この場合エクスカリバー)で刺されたから』だろう。
これが愛の証。なんてガバガバ設定なんだ!
「くそっ、アルの馬鹿野郎」
―――この多分彼は悪くないけど、とりあえず八つ当たりしておこう。
「……それがあの人魚の名前か」
「え?」
「『夫』の前で、しかもベッドの中で他の男の名を出すなんていい度胸だな……」
「え?」
『夫』って誰が、誰の。
視線を彷徨わせた僕に、ライアンは獰猛な顔で笑う。
「左手を見てみな」
「うん? ……あっ!」
指輪。輝く石が嵌め込まれた、その指輪は僕の指にピッタリ嵌り艶然と輝いていた。
「代々伝わる物だ。俺の母親も付けていた……今日からテメェのものだぜ」
黒髪を掻き上げて、すみれ色の瞳を細めるその笑み。穏やかでどこか艶のある……そして豊満で(硬そうな)胸(筋)。
『初恋の人とほとんど一致じゃん』って脳裏で囁く声と。
『いや決定的なところが違うだろ』って呆れる声と。
「おいリアン。……やれやれ、次は黙りか。これは少し『お仕置き』が必要なのかもな」
「え!? ちょ、ちょっと、ま、待って……や、やだ……どこ触って……ぁ、あ、ん……っ、うわぁぁ!」
再びシーツに沈み込んだ僕は、泡になって死んでしまうのとどちらが楽だっただろう……と頭の片隅で考えていた。
でもそれも一瞬のことで、やはり覚えたての快楽と痛みにのたうち回ることになる―――。
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