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1話

 灰色がかった切れ長の目が、すうっと細くなる。獲物を狙うユキヒョウのような目。対して、自分は食い殺される動物のような目で、懇願する。 (あなたに殺されるなら本望。)  怖いかもしれないが、本音。  頸動脈を確実に狙い、慎重に丁寧に両手で軽く締めてくる。彼の細長く白い指先が首に食い込んでいる。  絞められている黒葛原光波(つづらはらみつは)より苦しそうな表情で、月城(つきしろ)は、 「痛かったり、意識が飛びそうになったり、異変を感じた時はすぐに叩くなり、服を引っ張ってください。命に関わりますので」  彼に生命(いのち)を託す悦びに、笑みがこぼれた。 「ひどいことしていいから」 「そんなこと言わないでください。本当に、押さえが利かなくなる」  風呂上がりにボディクリームを塗られるたび、情事の時に首に触れられるたびに、その大きな両手で絞めてくれないかな、と思いながら敷布団に転がり、うっとりと目を閉じる。  覆いかぶさってくる彼の銀糸のような長髪が頬をくすぐる。

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