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2話

 祈りにも似た、恍惚とした表情で――あどけない潤んだ瞳で自分を見つめる。  首筋に触れるたびに、小さく震える身体。うっかり交わっている最中に触れると、気を遣りそうなほど内部が締まる。  最初は嫌がっているのかと思っていたが、そうではないらしい。 「ねえ、してくれないの?」  何度も絶頂を味わわされたために、舌足らずでかすれた声が問う。  ドールみたいな彼。両手で首筋を十分に覆えるほど細く白い首と腰。ちょっとでも力を入れたら折れそうだ。  自分の手で彼の首を絞めるのが、怖い。  上目遣いでねだるなんて、愛くるしくて卑怯だと思いませんか? 「いつかしましょうね」  そのいつかが来ることがないといいけれども……。どうも、彼のことになると狭量で、束縛気味な人間になってしまうらしい。  浮気現場を見たら、速攻緊縛して、絞殺してしまうかもしれないほど彼に惚れている自覚はある。  それでも彼は月城を見て「人間らしくなった」と言うだろう。  束縛を嫌う彼と関係を続けるためには、いつでも離れられるこの関係がちょうどいい。名前の付く関係になってしまったら、甘えたり必要以上に束縛してしまったりと、二人にはよくない未来しか見えない。 「あまり私を焼かせないでくださいね。光波にひどいことをしたくないので」  上手く笑えているのだろうか、真剣な目をしていないだろうか。 「ねえ、光波?」 「そういうとこ、好きです。聡さんが真剣に僕のことを想ってくれていること、考えてくれていることと、真面目で融通が利かないところも全部好き」  でも、と彼は続ける。 「ねえ、聡さん。本当に嫌だと思ってる?」  小首を傾げた後、そっと唇を重ねてくる。  確かに、嫌なことは話し合いやその場で主張してくる彼が、おとなしく身を委ね、蠱惑的な瞳で見つめている。  軽く頸動脈を圧迫された彼は、恍惚とした表情をしている。  苦しいのだろうか、それとも快楽を得ているのか。わからず、絞められている彼よりも苦しそうな表情で彼を凝視した。  当然のことだが、返事はない。    首に力を入れて、同時に自身を最奥まで突き入れる。抜くときは、手の力を抜き、呼吸させる。まるで、自分が彼を生かしている気分になってくる。 (このまま彼を殺していいのでしょうか?) 「あああっ、やっ、あっ苦しッ」 「してほしいって言ったのは、光波でしょう?」  左脚を胸に着く程倒し、片手で抑え込む。彼の表情と手の動きに注目しながら、遠慮なく自分の快楽を追う。腰を突き入れるたびに、銀色の髪が四方八方に揺れ、いつもより熱く締まる内壁を擦る。  痛いほど締め付けてくる肉壁の奥の奥まで味わいながら、光波のいいところを張り出した先端で押し潰す。   「出しますよ」  こらえきれず、声が漏れる。首を絞める指に力がかかる。腰が細かにけいれんしながら、ゴム越しに欲を吐き出す。  ゆっくりと指の力を抜き、息を整える。  潤んだ瞳は、今にも零れ落ちそう。彼は、じっと瞳に月城の姿を映した後、口角を上げ、ゆっくりとまばたきをした後、まぶたを閉じる。頬を伝う一筋の涙がつうっと堕ちていく。 「私には……あなただけです。光波さん」  ケガや痕が残っていないか入念に確認した後、汗ばみ、細かにけいれんする光波を抱き締めた。

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