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「泣くなよ」
そして暫しの沈黙の後、優しいと勘違いしそうな柔らかな声が空気を揺らすが、一度堰を切ってしまえば、そう簡単に止めることなど綾人にはもう出来なかった。
「しょうがないな」
胸元に手が伸ばされる。
抵抗しようとした途端、手を掴まれて先程一人で涙を拭いていたタオルを使い、手首をきつく縛られた。
「やっ、もう……やめてくれ!」
綾人は懸命に訴えるけど、願いも空しく前が開かれて胸が外気に晒される。
赤く腫れた二つの尖りは先端が中に入っているが、彼は無言でそれに口づけチュチュウと音を立てて吸う。
同時に身体を押し倒されて後孔にペニスが宛がわれ、それを少しづつ進めてくるから、いくら慣らしてあるとはいっても、圧迫感と鈍い痛みに綾人は布団をずり上がった。
「止めるとか、言うなよ」
「なっ……やっ……ああぁっ!」
一気に奥まで深く穿たれて悲鳴に近い声を上げると、再度乳首に口づけた智が乳輪を吸って歯を立てる。
「くぅ…ゔぅっ!」
痛みに悶える綾人の腰を掴んで身体を引き起すと、縛った手首を首に回させ、膝裏をガシリと掴んだ智が下から腰を打ちつけて来た。
いわゆる、対面座位の体勢だ。
「ひっ!あっ……はぅっ」
深くなった接合に、爪先が空気を何度も蹴る。
玩具が自分から離れるなんて、生意気だと思ったのだろう。
「……淫乱」
「んっ……んぐぅっ!」
唇で口を塞がれて、舌を吸い出され甘噛みされれば、意識を保っている事すら困難になって来た。
「ふぐぅ…んっ……んぅ―――」
徐々に律動が激しくなり、接合部と手で支えられている身体はカクカク力無く揺れ、涙と涎でぐちゃぐちゃになった綾人の顔が赤く染まる。
――おかしく……なる。
「うぅ……うっ」
こんな愛の無い行為に悦ぶ自分は本当に厭らしく、彼の言うように淫乱だから、毛嫌いされても仕方ないのだと綾人は新たな涙を流し、嗚咽混じりの嬌声を上げた。
「あぁっ……や、あンっ!」
前立腺を的確に突かれ、その快楽へと脳が勝手に縋りつき……酸素不足の綾人の頭は、考える事を放棄し始め、止まぬ突き上げに喘ぐ内、只悦楽に溺れるだけの肉の塊に成り下がる。
だから、
「男なんて、どうすりゃいいか分かんねーよ」
と、戸惑うように吐かれた言葉も、
「……離れるなんて許さない」
と、唸るように空気を揺らした低い声も、耳の中へは入っていても、頭の中には入って来ず、その意味までを理解するにはまだまだ時間がかりそうだった。
End
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