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第1話
「大雪で全面通行止め!?マジかよ…」
無理矢理にもぎ取った有給休暇。三泊四日で雪景色が素晴らしいと言われていた高級旅館の予約を取って悠々自適にひとり旅を楽しく過ごすはずだったのに…
これじゃあ宿につくことはできない…
天災の場合のキャンセル料ってどうなってんだ?
電話をしてみるけれどパンクしているらしく繋がらない…
「はぁ…これまで一度も有給とらずに頑張ってきたのに…残業だって頑張ったのに…何で…何で…俺が何したんだよぉ!」
車の中で叫ぶけれど勿論答えてくれるものはいない…
「てかさぁ。今日じゃなくてよくね?せめて宿についてからでよくね?ここなんもねぇし…」
人っ子一人見当たらない。民家だってない。
「どうすんだよ…」
この辺りは別の大きな道ができて皆そちらを使う。だからこっちはほとんど人は通らない。だからおそらく誰も見つけてはくれないだろう。天涯孤独の身。親しい友人もいなければ恋人だっていない。会社の人間とも親しくもない…うわぁ…最悪孤独死?こんなとこで?
俺は旧道の途中にある場所にどうしてもいきたくて今は使われてないこっちの道を選んだ。
かなり昔にあの辺りに住んでいてそこは俺の思い出の場所なのだ。
「やっと…会いに行けると思っていたけど…」
そこの近くに両親が眠ってる。かつてあの辺りは俺の先祖が代々受け継いできた土地だった。
両親亡き後訳もわからない遠縁の人たちが全て土地を売り払って俺を施設に入らせたのだ
まだ幼すぎた俺は何もできなくてただ墓だけは残してもらっていたのだ。誰も進んで管理するものはいないけど
あまりにも山奥で一度も会いに行けなかった…麓の寺の住職がそこを見ていてくれたけれどここ最近体調を崩し寺は廃寺となってしまい今どうなっているのかわからないのだ…
「父さん…母さん…」
このままここで死んだ方が幸せなのかな?
昔から壮絶ないじめにもあってきた。その度何度もこの生を終えようかと思ったこともあった…でもしなかったのは…必ずその時夢に現れるのだ。
死んだ頃のまま年もとらない両親の夢を…そして願うのだ。生きろと…
「俺さぁ…報われないみたいだわ…父さん…母さん…」
急な睡魔が訪れて意識を手放した。
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