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第8話
「ん、んんっ……ん」
発情に煽られた身体を、今日もまた慰められていた。火傷した肌を気遣われ、寝具に擦れることがないようにと、高く吊られている。
そのせいでティアは、今宵初めて男に正面から突かれていた。僅かに浮いた腰を抱える様にして男の手がティアの腿に回っている。
初めて内壁以外に触れられ、また正面から向き合うことで一層男の香りを濃く感じ、乱れ狂ってしまう。
「ふ、ふぅ、ん……! んふ、ん……」
いつもより強く腹のほうを突かれ、ティアは小さく何度も達していた。男はそれに気づいていながら何度も何度もティアを責め立てる。
貴方は誰?
ほんの少し目隠しがずれれば見られる。そんな誘惑がティアを襲う。
その時だ。
強い男の香りの中に、僅かに草の香りが混じっていることに気づく。
――これは……
すうっと鼻を通り抜けるような特徴的な香り。
ティアはその香りを放つものを一つしか知らない。もしかすると他に似た香りを持つものがあるのかもしれない。
だけど、もしティアの思い描くものだとしたら……?
「んんっ……!」
ティアは自らの妄想で果てた。
けれど、男は律動を止めない。
どんどんと濃くなる香りのなかで、確かにティアはクリュケルの葉の香りを嗅いだ。だとすれば今、ティアに屹立を埋めている相手はルチアーノである可能性が高い。
まさか……まさか……
けれどそれが本当だったらどんなに良いだろう。
ティアは目隠しに閉ざされた世界で、自分を抱く男をルチアーノに置き換えた。発情中の体でもぎりぎり受け入れられるほどの逞しい雄。それをルチアーノが苦し気に柳眉を寄せながらティアに打ち付けているとしたら……!
ぐちゅ、と濡れた音が一層大きく響く。司祭であるルチアーノが誨淫するなどということがあってはいけない。そう思う一方で、ルチアーノがティアを求めてくれているのだとしたら、こんなに嬉しいことはない。
甘い、罪の共謀……
もしもティアの思い違いでないのなら、いつか。
いつか、この首を甘く咬んで欲しい……貴方に。
――了――
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