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第7話

 それから三か月おきにやってくる発情の夜は、誰とも知らない男がティアを満たして帰っていく。  ルチアーノが連れてきた男なのだから、教会に出入りする人間だろう。そう思ってその男を探してみたが、香り以外知らない相手を見つけることは容易ではなかった。  それにおそらくあれはΩの香りに反応して現れる特別な香りだろう。普通にしていて嗅げるものではない。 「ティア。ティア……大丈夫ですか?」 「え?」  教会のバザーのあと、手伝ってくれた人々にお茶を振る舞っていた。ティアを抱く男の正体について考え込んでいたところに声を掛けられ、振り返った拍子に手にしていたお茶をひっくり返してしまう。 「ティア!」 「あつっ……司祭様! すみません……」 「私はいい。火傷しただろう」  お茶が司祭の服の服にかかると同時に、ポットがティアの肌に押し当てられた。風が通るだけでひりひりと痛みが走る。  早く冷やしたほうがいいと、ルチアーノに連れられて建物の裏に回る。汲み置かれた水でルチアーノはまずティアの腕を冷やした。 「司祭様も早く……」 「ああ」  濡れた袖を捲り上げ、ルチアーノもティア同様に腕を冷やす。思ったとおりティアよりもずっと赤みが強かった。 「クリュケルの葉を取ってきます……!」  クリュケルの葉には鎮痛作用がある。ティアの育った村では、子供が擦り傷を作った時などは必ずクリュケルの葉を揉んでつけた。  ルカとの散歩の時に見つけたクリュケルの葉を取って戻ると、よく揉みこんでからルチアーノの腕に貼る。そうしておいて麻布を巻き付けるようにして腕に留めた。 「これは?」 「痛みが引く薬草です……子供の頃にこうして怪我したところにあてていました」 「そうか。知らなかった……貸してごらん」  ティアが必死に手当する様を見ていたルチアーノは、同じようにクリュケルの葉を揉んでティアにつけてくれた。 「本当に申し訳ありません……」 「私こそ、不用意に後ろから声を掛けてしまって申し訳なかった」  ルチアーノに謝られ、ティアの胸は酷く痛んだ。傍にいればいるだけ、ルチアーノを慕う気持ちが強くなる。  それなのに、ティアは自分を抱く男の正体を考え気がそぞろになっていたせいで、ルチアーノに怪我をさせてしまった。  ルチアーノに密かに愛を捧げているにも関わらず、男の甘い香りを思い出さずにいられない淫らな自分を恥じる。 「暫く中で休んでいなさい」  ルチアーノはティアの肩を優しく撫で、使徒の元へと戻っていった。

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