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第6話
念押しのように明かりを落とされた部屋に、暫くして誰かが入って来た。
音もなく、声もなく。静かに行為は始まった。
ティアの夜着が捲りあげられ、愛液に濡れた場所に熱いものが触れる。ようやく与えられる。喜びでティアの喉が鳴った。
そして一呼吸おいた後、ずぶりと灼熱の棒がティアの身を貫いた。
「ん――ん、ふぅ……」
口を塞がれていても鼻から嬌声が漏れてしまう。ぐちゅり、ぐちゅり。緩やかな抽送がティアの後孔を濡らす愛液を混ぜ、卑猥な音を立てた。
その場所以外、一切触れられないまま男はティアの熱を高めていく。シーツに擦れる分身からは男の律動に合わせたタイミングで白濁が漏れた。
「う、っ……ん、んん……ふ」
気持ちいい。
どこの誰かも分からない人間に後ろから貫かれ、それでもティアは感じていた。どれだけ平穏な生活を望もうとも、爛れた生活から離れようとも、発情が訪れればティアは身体の奥から燃え盛る熱に抗えない。
かなりの質量に奥を強く突かれ、喜びが全身に走る。濡れた音が暗がりに絶え間なく響き渡った。激しくなる律動によって男の匂いがティアに届く。
甘い、脳を直接焼くような甘い香りだった。これまでに嗅いだことのない匂いだ。
愛撫のひとつも貰えない。ただ貫くだけの存在は、そこしか触れないがために一層ティアを過敏にさせた。
自らも腰を揺すって男の雄を誘う。肉襞で雄を絡めとり吸い上げて、喰い絞めた。微かな息の乱れはあるが、男はそれでも声をあげない。荒い息遣いと狭窄を穿つ音だけが部屋に響いた。
「ん、んんっう……っ、ん!」
一番深いところを突かれたその一瞬に、ティアは上り詰める。同時に奥へと放たれた飛沫がティアの火照った身体を醒ましていく。
ああ……この人はαなんだ。
βやΩが相手でもある程度は満たされる。けれど、αが一度に注ぐ大量の精に比べれば効果は薄い。発情した身体が瞬間的に満たされ、熱が引いていくのは、相手がαである証拠だった。
男は大量の精をティアに放った後、手首と足首の戒めを解いて部屋を出て行った。完全にその気配が消えた頃、ティアは目隠しと口に咬ませた布を剥ぐ。
――あれは誰だったのか。
匂いを思い出すだけで、ティアの脳は甘く痺れてしまう。
Ωだと隠すための処置でしかないと理解していても、ティアは男の香りを忘れることができなかった。
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