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前編

 ぬめりのある水音と自分の口から漏れる声だけが静寂を満たしている。  同じ箇所を淡々と愛撫され続けてもうどれくらいになるんだろう。男の泣き所とも言うらしいそこを長い指先が緩やかに突き、擦り、連動して前の昂ぶりからは堪えきれない雫が落ちる。膝立ちであいつの足を跨ぐようにして向かい合っている俺は、もう片方の手と口で胸の突起を攻められながら、両手を肩に載せてされるがままになっていた。 「──そこ、別に感じねえって……言ってんの、に。ふっ……く、」 「いいの。好きにさせろよ」  くすぐったいと痛いの間くらいの力加減で甘噛みされ、その間も後ろへの刺激は単調だ。気持ちいいのにイケない俺は、ただ熱い息を吐きながらこいつの気が済むのを待つ以外にない。どうせまた何か腹黒い計画でもあるんだろう。  とはいえ、そろそろ飽きてきたのか後ろから指が抜かれてそのまま後ろにひっくり返される。物足りなさに切なく揺れる俺の昂ぶりはずっと放置されたまま、それでも後ろへの刺激で頭の奥の方がじんと痺れて色々考えるのは億劫だった。  ウォルターが俺の脚を抱え上げようやく──と思ったら、そのまま少しかがんで足の付け根の辺りに唇と舌を這わせてきた。 「あっ……はっ」  ビクンと腰が跳ねて更に前が硬くなり反り返る。そこも弱い部分だというのはこいつに知らしめられている。肝心な部分を放っといたまま、下肢を丹念に調べ上げるように愛撫され、俺はひたすら息を弾ませ腰をくねらせて逃れようとしたが、それが本気の抵抗でないのも判りきっているあいつは足首を握って離そうとしない。そのまま指を咥えて間に舌を這わされ、俺は更に高い声をあげた。 「やっ、も……んなとこ」 「やだ。こういうトコ感じる浩司艶っぽ過ぎて」  見せ付けるようにちゅぽんと音を立てて口を離し、開いた唇から伸びた舌が俺の足の指の間を舐めあげていく。勿論事前に一緒に入浴しているし綺麗なはずだけど、それでもいつも地面を踏んでいて靴に収まっているパーツが人の口に入っているのかと思うだけでいたたまれない。自分が女に施すことはあってもされたことなど勿論こいつが初めてで、こそばゆさも含めてその快感に体全体で反応してしまう。  実は今夜はクリスマス・イブだ。矢部も本当は一晩中一緒に過ごしたかったらしいが、流石にそれは断り、いつもよりちょっとお洒落なディナーとプレゼントで満足してくれた。  ウォルターの方は恋人と過ごすのかと思えば、そういう世間一般で特別とされている日は意識して会わないようにしているらしく、暇だったのかいつもより豪勢な夜食を食べさせてもらった。その代わりといってはなんだが……こうやって気の済むように体を任せているわけだ。 「あっ」  いきなり跡が残るほど太腿の付け根を吸われて悶える。 「今何か余所事考えてただろ」  音を立てて連続で跡を付けられ、息が弾む。 「んなこと、ねえ、よ」 「そうかなあ」  今度はくるりと体を反転させられて、尻の下の方から、肌に触れるか触れないかの手の平での愛撫。俺はこれに凄く弱い。切なく吐息しながら、崩れそうになる体を腕だけで支えた。  唇と舌が背筋を伝って上にやってくる。焦らされまくってもうどうにかなりそうだった。 「なあ、ショーコに何プレゼントしたの?」  耳の中に落とし込まれるバリトン。悲鳴を噛み殺しながら、 「ビーンズの、ネックレス」 と答える。 「オープンハート、欲しがってたけど……流石にそれは」  舌先が差し込まれてピチャピチャと音を立てられ、喘ぎながら腕を折った。 「ふーん? いいのか? 形に残るものにしちゃって」 「ふっ、んんっ──結果がどうでも、大事にするからって、さ……あっ」  耳の中に話し掛けるの止めて欲しい。ホント、力が入んねえ……。 「へえ」  囁くように吐息と共に柔らかく舐め上げこじ入れ、唇で覆い吸い上げられる。その度にびくびくと反応する体を楽しみながら、大きな手の平がようやく中心を包み込んだ。 「んっ」  すっかり硬くなっているそこを、先端から漏れる雫を撫で付けながらしごかれて、もうすぐにでもイキそうだった。大抵何回かは先にいかせてくれるのに、何故だか今夜の焦らしは執拗だ。いつもよりアルコールの摂取量が少ないので思考がはっきりしている分だけ、自分だけがいいように弄ばれているのが堪らなく恥ずかしい。こっちから何かするのは禁止されていて、実験なんだか観察されているんだか、俺にとっては羞恥プレイの極みだった。  けれど、今度こそ出させてくれると思った手の動きも止まり、先端から溢れる透明な雫を後孔になすりつけながらまた指が侵入してくる。 「ん……ふっ、く」  もう十分に解れていて、今までなら挿入している頃だ。なんなんだ今日は……。 「たまんねえな、浩司」  少し下卑た調子で、エロい声が外耳をくすぐる。それだけで自然に背中が反り返り全身が震えた。指が中にあるまままた仰向けにされて、互いに視線を絡ませる。  うっとりしているお前の顔好きだよ……。艶然って表現がぴったりくる。これでホストにでもなった日にゃあ、あっという間にトップ間違いなしだ。けど、何の因果かこんなとこで俺とスキンシップしてるという。まあ、お互いに女とのセックスとは全く別と割り切って、本当にリラックスしてやってるんだからしょうがない。  こんだけ焦らされてこいつだけ萎えてるってんなら俺もがっかりだけど、モノはしっかり勃ってて腰の動きだけで俺のと擦り合わせるようにされる。カリと裏筋がいい感じに刺激になって、ますます吐息が熱くなってくる。 「っは……んんっ、あっ」 「いい? 浩司」 「ん、いいよ……けど、いい加減イキてえ……」 「そうだなあ~」  にまーって感じに唇の端を引いて笑い、膝を思い切り開かれて腰の下に自分の膝を入れてきた。 「え?」  そんなんされたら思いっきり見えるじゃんか! いや勿論今までも散々見られてるし今更だけど、見られてることを自分の視界に確認するってのはまた格別の恥ずかしさがあってだな!  指で中をくちゅくちゅと弄くりながら、端正な顔が下りて舌先が皺を伸ばすように孔の周りを舐めていく。ぐっ! 官能的過ぎるっつうか、本来排出するための場所にそんな綺麗なもんが近付けられているっていうだけで裸足のまま逃げ出したくなるんだけど!  不自然な体勢で息苦しいのもあったけど、そんな事どうでも良くなるくらい視覚からの刺激が強すぎて一瞬目の前が白くなった。──イった? と思ったら所謂空イキだったらしい。 「今、中がキュッてなった。良かったんだ……?」  意地悪気に言われても、どうしようもない。 「って、こんだけ時間掛けといて一回もイカせてくれねえなんて」  恨みがましく睨みつけてみる。いつもより迫力はねえかも……つか、こんな格好させられてちゃ威厳も尊厳もなんもない。 「んー……色々試したいのもあるし、俺だって我慢してるんだけど? これでも」 「知るかくそっ、我慢すんなっ」  しゃべりながらも太腿の柔らかい部分を吸われたり舐められたりで、内腿がぷるぷると震えた。それに合わせて股間のものも切なく揺れている。うー、出してえ……! 「はいはい。じゃあもうちょっとこう、挿れたくなるように言ってみて?」 「うっ──」  きたー……。女に対しては絶対やらないだろうこいつのサドっぷりひでえ。俺がそういうの一番苦手なの解りきってて言うんだから始末に悪い。  ちゅうっと音を立ててから甘噛みし、さらに舐めながら袋の近くまで来たかと思うとまた後ろに去って行く。片方の手の平は臀部を撫で続け、もう片手で中をいじられて、それでもずっと竿の部分だけは放っておかれて宙に浮いた足の指先までが物足りなさに悶えるように震えた。 「──お願っ……もう、いれて……突いて、お前の、大きいのでっ」  恥辱にも震えながら、何とか口にした。悔しさと恥ずかしさで涙が滲んでくる。 「んー……ま、いっか。その表情に免じて」  表情? 自分の顔なんか見えるわけねえんだから、どんななんだか知りようもない。けど赤くなってんのだけは確実だろうな……。  腿を支えたまま膝が下がったかと思うと、突っ込んでいた指もそのままに滑らかな先端のものが侵入を開始する。 「あ、んあ、ひっ……ああ、んんっ」  判っていても、どんなに解されていてもその圧倒的な質量に貫かれ受け入れるのには躊躇する。純粋な痛みではなく、自尊心を傷つけられると言えばいいのか──それでも慣らされた体は受け入れようと中で蠢く。すっかり収めてから根元まで密着した状態で揺さぶられると、また喘ぎ声が漏れた。

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