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後編

「いいね……そそられる」 「ん、くっ」  今でもいっぱいいっぱいなのに、抜かれた指の分まで満たす勢いで中のものが大きくなる。こんの反則級のデカチンめ! 外国人って皆こんななのかー!? 確かめたくもねえけどっ。  徐々に激しくなる動きに合わせ、漏れる声も大きく熱くなっていく。我慢しても漏れちまうし、声出してた方がこいつも早くイってくれるみたいだし、そういう意味のない我慢はしないことにしている。こいつは俺の声や表情で欲情するみたいだけど、俺だってしてないわけないんだぜ? 今だってこうやって向かい合っていると、腰の奥の方がずくんと疼く。物理的にもだけど──それだけじゃなくて。  カーテンの隙間から漏れる白い明かりに、元々俺たちとは基本的に違う白さの肌がぼうっと浮かび上がって、それが上気して頬とか桜色に染まるさまは本当に綺麗だ。プラチナブロンドがしっとりと汗で額に張り付いたり、こめかみを伝う汗も僅かに開いた唇も、そこから時折漏れる呻き声みたいな低音もなんだか艶めかしくて色っぽい。  そういうの絶対口には出さないけど。  感じてる──そんな顔させてるの、俺なんだよなって思うと、得体の知れない何かが更なる熱を呼び覚ます。 「──んんっ、もうっ」 「いいぜ……イけよ」  舌先をちらりと覗かせて唇の端を舐める仕草が堪らなくて、そのまま自身を開放する。臍の辺りに一瞬熱いものが飛び散り直に体温と同化してしまう。ウォルターの動きは変わらず、少し引いてから泣き所を突かれ、悲鳴にも似た声を上げて腰が跳ねる。 「ひっ──ん、やっ……」  あっと言う間に復活した先から、動きに合わせてぽたぽたと飛び散る液体。軽くイキっぱなし状態とでも言えばよいのか、気持ち良いを通り越して結構辛い──んだけど。喘いでいる俺を見下ろすウォルターの顔がまた恍惚としていて色っぽくて、ついつい見惚れてしまう。  ようやく両腕をベッドに突くと、屈み込んで唇を合わせてきた。体がそんなに柔らかいわけではない俺にとっては厳しい姿勢なんだけど、貪るように舌を絡めあう。じゃねえとなかなかイってくんねえし。ちゅくちゅくと湿った音を立てて口内を犯し合いながらも、互いに視線は外さない。どうだよ? そろそろイクだろ? って如何に相手を気持ち良くさせられるか確認している感じ。  ああ──でもまた俺の方が先にイきそうかも。 「一緒に……」  それだけ言って、腰を押し付けながら肩に手を伸ばした。  少しだけ目を見張って、ふわりと笑みが浮かぶ。 「んじゃ、もっといい声で啼いて?」  いつものように外耳から囁きを落とし込まれ、明らかな目的を持って侵入して来た舌先に翻弄され、俺は全身を戦慄かせながら喉を晒した。やがてやってきた絶頂に合わせて締め付ける内部に搾り取られるように、ウォルターも精を放った。  一瞬また意識を手放していたんだろう。唇をついばまれて目を開けた。なんかホント……ここまで全身でどっぷり浸かっちまうセックスなんてこいつとしかしたことなくて……それは単純に挿入される方だからなのかもしれないけど、翌日まで残るような濃さって凄いよなと思ってしまう。それとも好き合っているカップルって皆、そんなに目一杯やってんだろうか。わかんねえけど。  つらつらと考えている俺の体を、いつの間にか用意してきている温かいタオルでウォルターが拭いてくれている。最初はぐったりしていたし、それ以降もやっぱり意識は朦朧としているしでもうはなから恥ずかしいとか感じていない。なんなんだかなー……。こんだけ気ぃ遣われたら女ならころっといくだろうな。  ふと、先刻ウォルターに当たっていた光の筋が気になり、遮光カーテンを開けてみた。ベッド脇の腰高窓の方だけど、月の光がいくら冴えていてもちょっと明るすぎるだろうと思ったんだ。 「あ……積もってる」  しんしんと音も無く降り続けるぼた雪が、庭の木々と芝生を白銀に染めていた。来る時は全然そんな気配はなかったってのに……明日帰るとき大変だな、こりゃ。  現実的なことを考えている間にからりと掃き出し窓の方が開いて、冷たい空気が流れ込んで来た。  見ると、スウェットの上下にサンダル履きでふらりとウォルターが庭に下りるところだった。 「おい、んな格好じゃ風邪引くぞ!」  声を掛けたものの、未だ素っ裸の俺はごそごそと布団を被って自分の体温を失わない方を優先してしまう。  せめて窓閉めといてくれたらなーと思いながら、ダウンの掛け布団を巻きつけてベッドから降りた。  庭では、軽く手の平を上に向けて、真上を見上げて黙ってウォルターが立ち尽くしていた。 「どうかしたのか?」  大きいものは一センチもあるだろう雪片が、もう既に髪といわず肩といわず降り積もっている。冷たくないのか? 「──凄いな、これが雪か……」  こっちからは背中しか見えないけど、物音の無くなった世界であいつの声が耳に届いた。  その言葉で唐突に思い出す。本物の海を見たことが無いと言って海に連れて行かれたこと。台風も初めて経験したとかで興奮してたっけ。 「そっか、雪も初めてなのか」  確かに俺たちの住んでいる襟川町はとても温暖で、雪だって年に一度積もれば良い方だ。高校から編入してきたウォルターにとって、去年ちらつく程度だった粉雪とこのボタ雪じゃあ雲泥の差なんだろう。俺だって餓鬼の頃は毎年雪が積もるの楽しみにして大はしゃぎしてたもんな。  とはいえ、あの格好のまま放っとくわけにも行かない。俺はクローゼットまで引き返して勝手に中を漁るとバスローブを拝借して自分が着てから、何か上に着るものはないか探す。コートツリーのジャケット類はカシミヤだ。濡らすのはあんまりだろう。なんかもうちっとナイロンとか安いのねえのかよ……。ああもうこの際だからダウンジャケットでいいや。一つしかねえけど……。  ちょっとだけ考えて、それを手に庭に下りる。ぱたぱたと頭から下へ全部雪を払い落としてから、背中越しにウォルターの前からジャケットを体に巻きつけた。つまり二人羽織の逆バージョンみたいな感じで。 「──浩司、なんかこれっておかしくない?」  呆けていたウォルターもようやく現実に戻ってきたようだ。 「仕方ねえだろ。他に持ち出せるもん見当たらんかったし」  変な格好なのは確かだけど、真夜中だし誰も見てねえからこそ出来るわけで。昼間だったら勿論やるわけがない。 「まあいっか。ありがとな」  くすくすと笑いながら、ウォルターはまた夜空を見上げた。  俺も一緒になって上を向いてみる。  星も何も見えないグレーの空から、時たま銀色にきらりと光りながら真っ白い雪が降り注ぐ。空気は肌を刺すように冷たくて、どっちが上なのか下なのか判らなくなるくらい視界は白で埋め尽くされていく。 「まるで空を飛んでいるみたいだ──吸い込まれそう……」 「そうだな──」  体に回している腕から伝わる体温が無ければ、眩暈を起こして倒れそうなくらい圧倒されていた。こんな感覚、普通の日常じゃ忘れてた。 「なんかお前といると、色々新鮮だよ」 「そりゃあ良かった」  相変わらずくすくすと笑い声だけが聞こえてくる。  今こいつはどんな表情なんだろうな。見えないのがちょっと悔しい。 「あ、ウォルター」 「ん?」 「メリー・クリスマス」 「Merry Christmas」  回した手の甲に、あいつの手が重なった。      了

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