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第9話

...今朝は最悪だった。 俺は通学路を歩きながら、朝のことを思う。 起きたら、横には昨日散々俺を犯した男が気持ち良さそうに寝ていて。 慌てて起きて逃げるように部屋から出たら、スマホを置いてきちゃって。 最悪だ。 さいっあくだ。 おまけにこの痛み。 幸いなことに裂けてはいなさそうだが、鈍い痛みが腰に響く。 「あんの野郎...殺す」 「誰をっ?」 「っ!?あー、優介か。...はよ」 あのクソ野郎のことを考えていたら、いつの間にか隣に優介がいた。 優介は中学からの親友で、今年の春に俺と同じ神田高校に入学して同じクラスになった。 学校までの道のりをのんびりと歩く。 「おはよー、冬夜は休みの日何してたー?」 「あ?...遊んでた」 男とヤってたなんて言えるかっての。 「いいなー、俺勉強漬けだったよ」 「...今日テストか」 色々あってすっかり忘れてたわ! ゴールデンウィーク明けならあるじゃんか普通...。 「お、やってないんだ?...でもまあ、冬夜なら満点取れんじゃね!?」 「当たり前だ、やってやるよ」 「かっけえ!」 くだらない会話でも、昨日のことを忘れさせてくれる優介にありがたみを感じた。 それにしても、スマホどうすっかな。 ...最悪、無くなったことにしようとは思ってる。 アイツの手元にあると思うと......必需品だって手放せる。 登校すると、HRで全校集会がある、と言われる。 ゴールデンウィーク明けからいきなり体育館に集められて、気分が下がる。 「全校集会って何すんの、冬夜ぁ」 「知るか!クソ、サボりてえ…」 「冬夜ってさ、昔から授業とか集まりとか、行事にはサボらず出るよね」 ふふふっと面白そうに笑う優介に、確かにそうだ、と今までを振り返る。 「どうでもいいだろ」 「ふふ、まあな」 ニヤニヤと笑いながら言う優介に、何言ってんだよと笑って返し、くだらない話をしていると、 ...? 周りが急にざわめき始め、なんだ?と俺達は顔を見合わせ、みんなの視線の先にあるステージを見た。

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