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三田村side 連絡が来たのは半年前のことだ。 『おい明日香、俺猫拾ったんだけど』 久しぶりに兄から連絡があって、少し驚く。 『猫?丈のところ、飲食店だろ』 『ちっこいやつ。黒髪の』 ...ん? 『人間かよ』 『当たり前だろ。可愛いぞー、すげぇ反抗される』 ...よく耳をすますと、たしかにBGMに何かぎゃあぎゃあ喚いている声が聞こえる。 『....おっさん、さっさとタバコ返せよっ!何電話してんだよっ、おいっ!どけよ!』 丈がおっさん呼ばわりとか...気の合いそうな奴だな。 『なるほど...可愛いじゃん』 『だろー。俺、コイツと話つけるわ。中学三年生らしいし』 ああー、なるほどな。 『私の学校な』 『そういう事だ。んじゃ』 これが、私と猫との遭遇ってわけだ。 兄の説得が上手くいったのか、そいつは私の勤める学校に入学してきたのだった。 ちゃんと顔を合わせたのは、タバコを吸いに屋上に出た時だった。 扉を開けて外に出ると、春先の強い風が頬を撫でる。 「....おっ?」 私がいつも座っている場所に、一人の男子生徒が身体を丸めて寝ていた。 近づくと目がぱっと開き、男子生徒が起き上がる。 「だれ」 大きい猫目に、黒髪。 ...丈の言ってた通りだ。 まさに猫。 「寝るなら保健室を使えよ」 私は、毛を逆立たせた猫のように警戒する佐々木冬夜に、声をかけたのだった。 end​───55話『真実』の背景

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