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第12話
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意識を失った佑の体をバスルームへと運んだ匠海は、自らも服を脱ぎ捨てて、彼を抱いたまま湯船へと浸かった。
「佑」
自分の胸へと寄りかからせるような格好で彼を抱き、顔を上向かせ声をかけるが、長い睫毛が動く様子はまるでない。胸の尖りを彩るピアスを弄び、吸いすぎたせいで赤く色づいた唇をそっと口で塞ぐ。
すると、応えるように小さな口が開いたから、匠海は舌を中へ差し入れ口腔内をくまなく味わった。
彼を戯れに飼い始めてから、その健気さを愛おしいと思いはしたが、それは恋愛感情ではなく、男相手に本気になるとは思ってもいなかったのに。
「まさか、颯真に怯えるお前の姿にここまで嫉妬するとはな」
自分の気持ちをここまではっきり自覚したのは今日だった。
三年前、颯真によって犯された佑の姿を発見したとき、その無惨さに怒りを覚えたが、同時に微かな欲情が……匠海の中に芽生えはじめた。
「アイツを海外に追い出して、頭を冷やせば治まるものだと思っていたが」
颯真が犯人だということは、調べればすぐに判明した。彼がなぜ、あんな暴挙にでたのかは分からない。もしも理由が分かったところで到底許せることではないし、いくら可愛い弟でも、それとこれとでは話が別だ。
そう考え、犯人は颯真だろうと何度も佑に尋ねたが、彼は頑なに首を振り、小さな体を震わせながらも言葉を一つも発さなかった。それは……自分が躾けた結果であり、彼が弟を庇う理由も自分のためだと分かったから、以降佑には何も尋ねずペットとして接してきた。けれど、夜毎うなされる佑の寝言は嫌でも耳へと入ってきて――。
「……うぅ」
長い睫毛が細かく震え、ゆっくり瞼が開いていく。
「佑、愛してる」
認めてしまえばすんなりでてくる愛の言葉を囁けば、驚いたように体が震え、白い肌が薄紅色にサアッと染まった。
「……ゆめ?」
たまに、意識がはっきりしないとき、佑は言葉を発してしまうが、それを咎めたことはない。匠海はもともと感情の起伏が少ないものの、狭量な性質ではなかった。
「どうかな」
下肢へと伸ばした指先で、萎えたペニスを包み込み、それを上下に緩く扱いて耳朶を軽く噛んでやる。
「う……あぁ……ん」
「佑も俺が好きだろう?」
既に知っているけれど、彼の口から聞きたかった。
だから、意識が覚醒しきる前に彼の耳元へと囁けば……佑は何度も頷きながら「好き、好き」と繰り返し、昨日までとは全く違う、色香を纏った潤んだ瞳で匠海をうっとり見上げてきた。
Fin
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