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第8話
警視庁に着いて、俺は迷うことなく警視総監の部屋へ足を運んだ。
「失礼します」
「おぉ、貝塚くんじゃないか!今日はまたどうして?」
「荒川の件、伝わってますか?その件について話があります」
「あぁ、君が先日連れ帰ったという強盗犯だね?」
「はい」
警視総監はもうすぐ60になる年老いた爺さんだ。
正直言って、利己的で警視総監には向いていないとさえ思えるが、俺にとっては好都合だった。
「あいつ、見逃してくれませんかね」
「んー……。やはりそうくるか……」
「やっと見つけた俺の運命の番なんだ。みすみす逃すわけにはいかない」
「ははっ。なるほど、合点がいった。欲しい物のためには手段は選ばないってことか。それにしても本当、君は父親に似て計画的な男だね」
「それほどでもありませんよ」
総監は声を上げて笑いながら、机を指でコンコンと叩いた。
俺は持ってきていた100万円を総監の机に置き、部屋を出た。
──ppp…ppp…
「俺だ。」
「若、受け入れの準備が整いました。こちらはいつでも大丈夫です」
「あぁ、分かった。すぐに戻る」
電話を切り、俺は警察手帳を捨て、家に帰った。
──麗しき俺の小鳥を永遠に逃さないように。
fin.
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