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第3話
葵side
今年はひどい雪が降るらしい…。この地域では雪が降る事はほとんどない。稀に降るくらいだった。
窓の外を眺めていると雪が降ってきた。遊びたいけど、雪で遊んだら僕はきっと風邪で寝込んでしまうだろうな…。眺めているだけでも綺麗だからいいけど…。
「なぁ、見たか!雪降ってるぞ!」
「…っ!?…夏。ノックしようね。びっくりしちゃった」
「ご、ごめん…。驚かせちゃった…。外、雪降ってるぞ!雪だぞ!雪だるま作って来た!!」
そう言って差し出された手の上には小さな雪だるまが乗っていた。可愛いけど、これ夏が作ったのかな…。いつもはクールだからそんな風に雪で遊ぶようには見えないのに…。
不器用な夏にしては綺麗な雪だるまが手のいて、可愛かった。手冷たそう…。赤くなっちゃってる。
「あー、溶けちゃう!冷凍庫入れてくるねっ!」
「…あっ」
「待ってて〜」
溶け始めた雪だるまを持ってリビングに走って行った。普段静かで喋る事すら少ない夏が、あんなにも、はしゃぐなんて夢にも思わなかった。
今日は雪降るかな…。あ、今雪降ってた……。夏も子供っぽいところがあるんだ…。
新しい発見だったなぁ…。やっぱり僕も遊びたい!!でも…、夏に言ったら怒られちゃうかな。最近風邪を拗らせて心配かけちゃったから…。
「雪だるま冷凍庫に居るからいつでも眺めてね!外出ると風邪ひいちゃうからダメだよ!でもね、一緒に作りたいから雪集めてきた!」
「ど、どこに…?」
「お風呂に雪あるよ!雪だるま作ろ!アオちゃんも寂しいって言ってた!」
「あ、あおちゃん?」
「さっきの雪だるまだよ。葵のこと考えて作ったからアオちゃん!」
キャッキャッとはしゃぎなら説明してくれる。雪だるまに僕の前つけるなんて恥ずかしいな…。どれだけ僕のこと好きなの…?
可愛い恋人に連れられてお風呂場に行くと、積もった上の方の雪だけ沢山集めてあった。
「なっちゃん作らないと…。あおちゃんが寂しいってなっちゃうもんね」
「…っ‼︎ …うん!作って〜!!」
「可愛く作るね」
雪が降ると大抵家に引きこもるから久しぶりに雪に触れた…。冷たくてふわっとして…。懐かしい……。
結と同じくらいの時に雪で遊んだ時は、後は一週間体調崩したからなぁ…。ぼんやりと昔のことを思い出した。
「可愛い〜!やっぱり葵は器用だね」
「ありがと…。なっちゃんも冷凍庫に入れよっか」
「うん。入れてくる!」
今日は、平日。本当なら学校に行っている時間…。共働きの両親も家には居ないし、弟たちも学校。二人きりだ。
昨日ちょっと吐き気があった。体調が悪くて休んだのだが…、今日も休みを取ったのだ。親が…。過保護なところがあるけど、すごく優しい自慢の両親だ。
起きて支度してたら『休みだよ』と言われてびっくりしたけどね。夏に関しては完全なる仮病…。おかげで雪で遊べたけど、バレたら怒られそう…。
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