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第1話

 クリスマスイブの今日、俺は彼女に振られた。死にたい。  ……あ、いや、嘘。全然死にたくない。でもメッチャ落ち込んでる。これはガチで。  付き合って二週間。クリスマスデートを大成功させるべく、俺は完璧なデートプランを用意していた。  ――そう。夜景の見えるラブホの予約をしたのだ。  デートの開幕、彼女――元カノから『どこに行くの?』なんて訊かれたから素直に答えてやったさ。『メッチャ高いラブホ』ってな? そしたら振られた。元カノ曰く『ヤりたい精神見え見えなのがホント最悪』らしい。  いや、一応俺にも弁明させてくれ。  ――元カノはメチャクチャにスタイルが良かった。  脚とウエストは細いし童顔だし、背はちっこくて笑顔は可愛いし、何よりおっぱいがデカかったんだ。歩く度にブルンブルン揺れてたんだぜ? そんなのムラムラしない方が失礼だと思うだろ? 俺は思った。だからムラムラしたし、ムラムラしてるっていうのを伝えた。……その結果、振られたんだけどな。  まぁ、そんなわけで俺は今……地元で大人気のコスプレ喫茶【トランプ】ってところに来ている。何で喫茶店なんかに来てるのかって? ここのケーキがメチャクチャ人気なのと、俺が甘い物好きだからだよ、悪いか。  クリスマスだってこともあり、客の数はハンパじゃねぇ。メチャクチャ混んでる。なんかいい感じのカップルがアハハウフフと会話を繰り広げているっぽい。腹立つ。ケンカして別れろバーカ。  とかなんとか考えていたら、注文したケーキを完食してしまった。チクショウ、秒で消えたぜ。  次のケーキを注文しようとした――その時だ。 「――ハァ? オイ、ちょっと店員サン?」  ――突然、テーブルの上にショートケーキが置かれたのは。  注文していないショートケーキを机に置かれ、ミスかと思ってケーキを運んできた店員を呼び止める。  呼び止められた店員は、営業スマイルを浮かべながら俺を振り返った。  白と黒の、二―ソックス。  水色のドレスと胸元には黒いリボン。そして、白いエプロン。  柔らかそうな茶髪には、白いウサギの耳がピョンとくっついている。  ――だけど、男だ。 「はい?」  声も、しっかりと男のものだった。ちょっとハスキーで、見た目のイメージよりも声が低い。  身長は百六十くらいだろうか……ドレスから覗く腕は細くて華奢。瞳は大きくて、肌は色白。女装が似合う可愛い男だ。  だが今は、店員の容姿について感想を述べている場合ではない。 「コレ、頼んでないッスけど」  運ばれたショートケーキを指で指しながらそう言うと、妙に可愛い男性店員は愛想よく笑って答える。  ――「ボクからのサービスです」と。

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