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第14話(了)

 ――翌朝のことだ。 「はい、お兄さん」  ロストヴァージンした俺は、あのままアリスサンの部屋に泊まった。セックスはあの一度っきり。普通にシャワーを借りて普通に二人で寝た。んで、起きて帰ろうとしたら呼び止められて、小さな白い箱を手渡されている。 「あ? 何だよ」 「開けて見ればいいじゃん」  アリスサンに促されるまま、箱の中を確認してみた。  ――中に入っていたのは、喫茶トランプで大人気のショートケーキだ。  ――しかも、二つ。  訳が分からずアリスサンに視線を戻すと、アリスサンは顔に似合わねぇ煙草を咥えながら俺を見ていた。 「好きでしょ?」  俺が甘いもんを好きだからくれたっぽい。  てっきり、昨晩の俺がショートケーキ三個分だったのかと思った。……絶対言わねぇけど。 「……どうも」 「こちらこそ、昨日はどうもありがとう。思いがけず、いいクリスマスイブを過ごせたよ」 「そいつぁ良かったなッ!」 「はははっ!」  今思い出すと、昨日は最悪のクリスマスイブだった……!  女を抱くつもりで生きてたのに、まさかまさかで男に抱かれるなんて……想像できるわけねぇだろッ!  ――だけど。 「……なぁ」  部屋を出る前に、アリスサンを呼ぶ。アリスサンは煙草を灰皿に押し付けながら、小首を傾げつつ俺を見た。 「ん~? 忘れ物?」 「いや、そう、じゃ……ねぇけど」  ショートケーキの入った箱を握り直し、俺はアリスサンから視線を逸らす。 「……たまになら、相手……シてやっても、いいぞ」 「え……っ?」  俺は、女が好きだ。  だけど……あんな体験させられたら、そっち側もありなんじゃないかって思っちまう。そもそも、初めは男だって分かっていながらアリスサンを抱こうとしたんだし。  ――こんなのから始まる恋も、あっていいかもしれない。  俺は顔を上げ、アリスサンを見――。 「あ~……ごめんね? ボク、処女にしか興味無いんだよね~。だから、喫茶店のお客様としてなら大歓迎だけど、セフレとかムリなんだ~」  ――て、目を丸くする。  ……な、何て?  つまり俺は……ただの処女厨に目を付けられて、犯されただけってわけで? 「――テメェッ!」  事態を把握すると同時に怒鳴る。だが、アリスサンはケラケラと笑っていた。 「あっはは! まぁまぁいいじゃん! 何だっけ? えーっと……『穴の一つや二ついいだろって感じしないか?』だったよね? そういうことっ!」 「よくねェッ!」 「ははは~! またのご来店をお待ちしております、おに~さんっ」 「二度と来るかバーカッ!」  クソッ! ホワイトクリスマスだとか性夜だとかなんて、クソくらえだバーカッ!

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