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1,一目惚れ?
最悪…今日も早く帰れなかった。
いつもいつもいつも!!
生徒会長だからって調子に乗りやがって…副会長って立場はお前のサポート役なんだ。
手駒じゃねぇんだよ、くそ!!
仕事押し付けてさっさと帰りやがってムカつく。腕時計をちらりと見てため息が出る。
「また母さんに面倒なこと言われる…っ」
急ぎ足で階段を降りる。
あともうすぐで職員室!
鍵を返したらすぐ帰る!
それだけ。それだけ。
職員室が見えた。早く帰らないと。
焦りがそうさせたのか。
保健室の扉が何故か開いた。
嘘、こんな時間に誰か居たのか!
廊下に出てきたそいつは下半身だけ着ているが、上が…肌色だ。
何で半裸の男に遭遇せねばならん。
「ふざけんな!!こんな時間に何をしてたんだ。お前の話はよく生徒会でも上がる!伊藤龍星!また時間、気にせずそんなところで不純異性交遊か!!俺の仕事を増やすな!!早く帰れよぉぉ(泣)」
あれ、俺アホだろ。惨めになって涙なんか出てくんの。おかしい奴だと思われてんだろうな。言いたいこと言うだけ言って俺は鍵を返して振り返りもせず学校を飛び出した。
冗談だろ。
一瞬眺めただけの肌。筋肉質で割れてやんの。
ドキリとしたのはあの顔の良さなのか。自分にはない身体の良さに変な対抗心を燃やしたからなのか。いずれにしてもとんでもなく面倒な所に出くわしてしまった。
明日、顔を合わせることがあれば何かと言われたりしそうなのが嫌だな。
「ただいま…!」
「あら、おかえり。今日も遅いのねぇ〜。生徒会のお仕事ってこんなに遅いの?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。僕は優秀だからね。皆が頼ってくれるってのは良い事だよ。心配しないで」
ニコニコ笑えば何とかなる。
誰のせいでこんな心配性な親になったのやら。
生徒会長…恨むぞ!
「充、おかえり」
「あ、兄ちゃん。ただいま…あのさ、伊藤龍星って知ってる?」
「え!?なんで…俺あいつ苦手なんだけど。女の子とっかえひっかえだし。どこにいくにも横に女の子いるしな。授業もたまにサボるし。戻ってきたあとのあいつには必ずキツい香水と汗の匂いがしてるんだから汚いったら。なんで」
饒舌とはこのことだ。そうとう嫌いなんだろうな。止まらないな…(苦笑)
「いや、今日、腹たってさ。いつもあんなのかと思ってさ…」
なんて、本当は少し気になったからだ。
生徒会でも話に上がる有名人だ。だから彼のことは少なからず知っている。
モテるしカッコイイ…だから女の子に困らないんだろうけど、噂では毎日、違う人と遊んでるって話だ。
…おかしい。
なんで噂程度でよく知りもしない相手のことを悩むほど考えないとならないんだ。
「ご飯あとで食べる。風呂入っちゃうね」
「じゃ、俺はその次に入る」
兄の声を背中に脱衣場に向かう。
変な汗かいた。嫌なもんを見たからだ。
服を籠に投げ入れ、浴室に入り込む。
肌寒さに身体が震える。
素早く湯船に浸かって温かさにため息が出た。
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